ネットブックとプレミアムモバイルの間を埋めると言うが……
遠藤 ネットブックの登場によって、ノートパソコンのラインアップにも変化が出てきているのではないかと思います。富士通もネットブックを出されていますが、影響についてはどうお考えですか。
土井 上位機種のラインアップについては、従来と大きくは変わりません。18インチクラスのデスクトップ代替ノートから始まり、15インチ、14インチと順番にサイズダウンし、モバイルでは12インチ、10インチ以下のクラスまで広範に揃えています。ただし、低価格なネットブックが出た影響は確実にあって、より安価な機種にシェアが向かっている傾向はありますね。富士通としてもこれまで手掛けてこなかった10万円以下のレンジに力を入れなければならない。ネットブックとは一味違った低価格のPCを開発していこうと考えたのが「LOOX C」シリーズです。
遠藤 まず従来のラインナップがあって、ローエンドに非常に低価格なネットブックが来て新しい市場ができた。「CULVノートは、その間を埋める製品だ」と表現されますが、富士通としても、その点のスタンスは変わらないと考えていいですか?
土井 そうですね。ネットブックが出るまで、富士通のモバイルパソコンのほとんどが10万以上の製品でした。
遠藤 (持参したLOOX Pを指差して)これも今から思えば、高価な製品でしたよね。20万円は軽く超えていたわけですから。
土井 それがいきなり5万とか6万の製品になったわけです。つられて上位シリーズの値段も下がってきてはいるのですが、やはり「間を埋める製品が必要」と認識しています。歩調を合わせる形で、インテルからCULVという魅力的なCPUが発表されました。それにうまく乗っていければと考えたわけです。
遠藤 率直に言って、何が魅力なんですかね。このCULV。
土井 まずノーマルのCPUに比べて低消費電力という点がありますね。これまでもULV版(超低電圧版)のCPUがありましたが、標準電圧版のCPUに比べると、コストが非常に高かった。CULVは、省電力でありながらコストもかなり抑えられています。そのため低価格な製品が企画できます。
遠藤 稼働時間はどのぐらい伸びるのでしょうか。性能との兼ね合いで考えなければあまり意味がない話かもしれませんが。
土井 何と比較するかで違いが出ますが──。LOOX Cを例にとると、Celeron搭載のC/E50で6.2時間。上位のC/E70は従来のULV版CPU搭載になりますが、約9.2時間です。C/E70はCPU内部の省電力機能が豊富なので、その部分が稼働時間の差につながっていますね。
遠藤 ネットブックでそこまで持つ製品はなかなかないですね。
土井 搭載するバッテリーパックの容量も関係してきますが、富士通としてはもちろんさらに上を目指したいという目標は持っています。とはいえ、最悪の条件でもそのぐらいは使えるという意味で約6.2時間という数字を出しているんです。
遠藤 一方でCULVは、Atomよりも性能が段違いに高いわけですよね。
土井 C/E50で使っているCeleron SU2300のクロック周波数は1.2GHzですが、Atom N280(1.66GHz)と比較して約2.5倍高い性能が見込めます。C/E70になると、3倍ぐらいの性能差があります。
遠藤 ということは、間を埋めるというよりは上位機種に匹敵する性能があると言ったほうが正しいかもしれませんね。パフォーマンスのみで比べれば、上位のBIBLO MGやRシリーズに迫るんじゃないですか?
土井 CPUだけみればRシリーズと同じものを使っていますね。Celeron SU2300とCore 2 Duo SU9400。画面サイズも11.6インチとネットブックに比べて大きく、解像度も1366×768ドットあるので、使いやすいと思います。一方で機能は最小限に省いている。Rシリーズは、ビジネスコンシューマ(企業導入)を想定して、セキュリティ機能が豊富ですが、LOOX Cは最初の説明の通り、ネットブックと従来のラインナップ(A4)の「間を埋める製品」として、個人向けに提供するモデルという観点から搭載機能を絞り込みました。
遠藤 例えば、SDカードスロットやBluetoothはあってもPCカードスロットはないですよね。
土井 あとはセキュリティー関係の機能、指紋認証やTPM(セキュリティーチップ)などは省きました。スマートカードもUSB外付けタイプのみとなります。Rシリーズは企業導入も多いので、このあたりに力を入れているんです。
── 少し話がそれますが、企業向けのCULVノートも企画としてはあるのでしょうか。
土井 基本的に個人ユーザーを想定してますが,海外向けには企業向けをターゲットにしているモデルもあります。