イメージスキャナーがあれば、紙資料や手書きのメモなどを電子化して、整理しにくいドキュメントをPC上で活用できる。低価格な家庭向け複合機の普及もあって今まで以上に身近な存在にはなったが、大量の文書を手早く電子化するのであれば専用ドキュメントスキャナーに勝るものはない。ADF一体型のコンパクトなボディーは複合機よりも置き場所を選ばず、シンプルな構造のため紙詰まりも起きにくいなど、専用機ならではの使い勝手の良さが特徴だ。
個人向けのドキュメントスキャナーと言えばPFUの「ScanSnap」シリーズが定番だろう。毎年モデルチェンジを重ねて完成度を高めている(関連記事1、関連記事2)。そんなScanSnap独擅場なこのジャンルにもライバル製品が市場を形成・拡大しつつある。モバイルモデルではキヤノンが「imageFORMULA DR-150」を発売したばかりだし、デスクトップモデルではコクヨS&Tが「Caminacs」(キャミナックス)シリーズを発売中だ。
ここではA4対応の「Caminacs NS-CA1W」とScanSnapの最上位機「ScanSnap S1500」を使い比べてみた。
本体のボタン操作で自動処理を選択可能
「Caminacs NS-CA1」
コクヨS&TのCaminacsは、コンパクトボディーが魅力のドキュメントスキャナーだ。紙送り機構の先端部に2組のラインセンサー(両面ともカラーCCD)を並べて、裏表を同時に読み取るハードウェア構成(ScanSnapと同様)で、前面カバーを開いて給紙トレイにするなど、ドキュメントスキャナーとして一般的なデザインだ。
また、標準で排紙トレイが付属しており、装着後も前面に沿って閉じられる。排紙トレイがなくても単に手前に排紙されるだけなので、数枚程度のスキャンがあれば取り付けなくても問題ない。
付属ドライバーとアプリケーションをインストールすればタスクバーに常駐。原稿を給紙トレイにセットして本体のスキャンボタンを押せば、自動的にスキャン動作が始まってPCにデータが転送される――という基本的な使い方は、ScanSnapなどと同様だ。
特徴的なのは、フロントパネル部に7セグメントLEDとカーソルボタンが用意されている点だ。最近のスキャナー、特にコンパクトスキャナーは本体側に操作部をほとんど持たず、PC側から操作するのが一般的なのに対してやや目新しい。
本体のカーソルボタンとLED表示により9種類のスキャン動作を割り当てることができ、異なる解像度、カラー/モノクロ設定、出力する・ファイル形式(JPEG/PDF)、スキャン後に起動するアプリを設定しておける。
フラットベッドスキャナーなどでも複数(3~4種類)のスキャンボタンが用意され、スキャンした画像をファイルに保存、メールに添付、Photoshopの起動といった動作を選べるものがある。その強化版といったところだ。
スキャン後にメニューがポップアップしてデータの用途をマウスで選択する方式より手早くも、スキャナーだけで次々と用途を変えて操作できる。ファイルの保存先も振り分けられるので、PCのフォルダーをネットワーク上で共有していれば、PC操作なしで自分のフォルダーにスキャン結果を投げ込める。
同社ではこうしたオフィスシーンでの利用に、サイレックス・テクノロジーのUSBデバイスサーバー「SX-2000U2」との連携を推奨している。本機のようなUSB接続のみの周辺機器をLAN(Ethernet)に接続するためのUSB→LAN変換アダプターで、あたかもローカルPCのUSB端子に接続しているかのように利用できる。部署では複数台のスキャナーを一度に導入できない場面も多いだろうが、このLANアダプターを使って共有すれば大幅に利便性が上がるはずだ。
実際に使ってみると、モノクロとカラー、解像度の違いで読み取り速度が大きく異なり、特にカラーでの高解像度(400dpi)設定では極端にスキャン速度が落ちる傾向にある。とはいえ、実用的な200dpiであればカラー/グレースケールでも軽快に動作する。
Caminacs NS-CA1でのスキャン時間比較
カラードキュメントA4、10枚両面(20ページ)
開始からスキャン動作終了まで | 開始からファイル出力まで | |
---|---|---|
カラー(400dpi) | 12分36秒 | 12分36秒(スキャンと並行動作) |
カラー(200dpi) | 2分55秒 | 3分20秒 |
グレースケール(200dpi) | 56秒 | 1分18秒 |
モノクロ(200dpi) | 53秒 | 57秒 |
モノクロ(100dpi) | 36秒 | 37秒 |
付属ソフトでは、PDFや画像のデータベース化ができる「さくっとファイリング」が便利だ。スキャン結果をPDF化する際にキーワードを付けて検索・分類できるほか、PDFファイルのWord/Excel形式への変換、OCRによるテキスト化など、書類整理に関する機能が豊富に揃っている。
また、OCR機能を持つ名刺管理ソフト「Presto! BizCard 5」も標準で付属するので、ほかにアプリケーションを用意しなくてもビジネスシーンには十分活用できるだろう(OCRソフト「読み取り革命」体験版も付属する)。本機はTWAINにも対応しているため、Adobe Photoshopなどの画像処理ソフトなどと組み合わせても便利に使える。
※「ScanSnap」シリーズのメーカー名に誤りがありました。訂正するとともに、読者ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
