プリンターに何を求めるか
日本のユーザーには独特の感性があり、写真やカメラ(デジカメ)に対しての品質要求が高い。言ってみれば、誰もがマニアック的要素を持っているということだ。
家庭内でのカラープリンター利用は、もっぱら写真印刷のためであり、ドキュメントへの印刷ニーズはそれほど高くない。そのため、国内で競うようにフォトプリンターを開発してきたセイコーエプソン(エプソン)とキヤノンの製品は、もはや「究極の写真プリンター」と呼べる品質にまで引き上げられている。
一方、欧米の状況を見てみると、カラープリンターはビジネス分野で広がり、やがてコンシューマー市場に拡大してきた経緯がある。
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)を傘下に抱える米ヒューレット・パッカードにしても、IBMのプリンター製造部門が独立してプリンター専業メーカーとなったレックスマークにしても、当初は文字印刷が主体。そこからグラフや資料写真などを含んだ文書印刷の最適化に進み、やがては写真印刷においても一定の品質を持つようになってきた。
さて、前置きはこれぐらいにしておこう。このことを意識の片隅に入れておくと、今回紹介するハイエンドクラスのインクジェット複合機で、それぞれの特徴が思い浮かびやすくなるはずだ。
ミドルレンジ・ハイエンドの違いはコレ!
今回は、インクジェット複合機の中でも、コンシューマー向け製品としてより上位に位置するハイエンド機が対象だ。国内メーカーからは、キヤノンの「PIXUS MP990」、エプソンの「Colorio EP-902A」の2機種をピックアップ。海外メーカーからは、日本HPの「HP Photosmart Premium C309G」をエントリーして、合計3製品を比較する。
いずれも、前回取り上げたミドルレンジ機を基本として、例えば、印刷解像度やイメージ取り込み解像度の向上、印刷時間の短縮といった性能がアップしている。また、両面印刷機能、自動紙送り(ADF、オートドキュメントフィーダー)、フィルム原稿の読み取りなどの付加価値が加わっている。ミドルレンジとハイエンドで何が異なるのか。まずは、下表で強化ポイントを整理してみよう。
主要スペック
中位機 → 上位機 | MP640 → MP990 | EP-802A → EP-902A | B209A → C309G |
---|---|---|---|
プリンター部 | |||
インクジェット方式 | サーマル | MACH | サーマル |
最大解像度 | 9600×2400dpi | 5760×1440dpi | 4800×1200dpi → 9600×2400dpi |
インク色数 | 5色 → 6色 | 6色 | 4色 → 5色 |
印刷速度(L判) | 約17秒 | 約14秒 | 約13秒 → 約12秒 |
CD/DVD印刷 | ○ | ○ | × |
自動両面印刷 | ○ | △ (オプション) |
× → ○ |
スキャナー部 | |||
センサー方式 | CIS → CCD | CIS | CIS |
光学解像度(主走査×副走査) | 4800×9600dpi | 2400×4800dpi → 4800×4800dpi | 1200×2400dpi → 4800×4800dpi |
フィルム読み取り | × → ○ | × | × |
ADF | × | ○ | × |
その他 | |||
液晶ディスプレー | 3.0インチ → 3.8インチ | 2.5インチ → 3.5インチ | 2.4インチ → 3.45インチ |
ネットワーク | 有線/無線LAN | 有線/無線LAN | 無線LAN → 有線/無線LAN |
ウェブサーバー | ○ | ○ | ○ |
Bluetooth | ○ | △ (オプション) |
× → ○ |
用紙トレイ(普通紙) | 150枚×2 | 120枚 | 125枚 |
※ミドルレンジ/ハイエンドで仕様が変わらない場合は、矢印なしで項目を記載しています
この表を見れば、カラー写真印刷の品質に最も関係すると考えられる印刷解像度やインク色数は、キヤノンや日本HPのモデルで変わっているが、印刷速度はほぼ同じということが分かる。機構的な話では、MP990がフィルム原稿の読み取りに、EP-902AがADFに、C309Gが自動両面印刷にそれぞれ対応した点が目立つ。
また、これらの性能向上に伴って、本体のサイズや形状も若干変わった。もちろん価格も違う。それぞれのメーカーの直販価格を比べてみると……。
ミドルレンジ・ハイエンドの価格差
メーカー | 中位機 | 上位機 | 価格差 |
---|---|---|---|
キヤノン | MP660:2万9980円 | MP990:3万9980円 | 1万円 |
エプソン | EP-802A:2万9980円 | EP-902A:3万9980円 | 1万円 |
日本HP | B209a:1万5960円 | C309G:2万1840円 | 5880円 |
では次ページより、各機種ごとに特徴を見ていこう。冒頭で述べたように、日本では画質を重視するユーザーが多いため、ハイエンドモデルではその辺を詳しく調べてみた。また、各機種での印刷サンプルは、最後のページにまとめている。

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