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ゼロからはじめるストレージ入門 第13回

仮想化のためのI/O管理や重複除外を知っていますか?

サーバ仮想化のためのストレージの機能を探る

2009年11月27日 09時00分更新

文● 吉田尚壮/EMCジャパン株式会社 グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 テクノロジー・コンサルタント

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SANの性能を維持するには?

 「ストレージの性能維持」の課題に対するソリューションをもう1つ紹介しておきたい。ESXサーバの場合、仮想マシンごとにCPUやメモリのリソースを必要に応じて割り当て共有できるため、ある程度はアプリケーション性能の維持やコントロールが可能だ。しかし、データベース系のアプリケーションの場合、ストレージに対する負荷が高い傾向にありストレージのネットワーク(SAN)やストレージ自体がボトルネックになりやすい。

 前述した通り、アプリケーションの性能を維持するには、SANの構成にも配慮する必要がある。ここで、図3をご覧いただきたい。一般的にESXサーバで仮想化されている環境において、仮想マシンのI/OはESXサーバで共有されているインターフェイス(ここではHBAが2つ構成されている)とスイッチを経由してストレージアレイへ到達する。

図3 サーバ仮想化利用時の一般的な構成

 ESXサーバは、これら複数の経路(パス)を冗長化し、パス障害時にフェイルオーバすることが可能である。しかし、通常のポリシーではアクティブなパスが限定されてしまい、効率的とはいえない。たとえば、ESXサーバでパス制御に対して「Fixed」というポリシーを定義するとパスが4つ認識されるが、利用可能(Active)なパスは1つに限定される。

 この場合、パスが固定されてしまうため、予めシステム全体でI/Oが分散するようなパスの設計・構成が必要となってしまう。また、この状態では物理的には転送速度が4Gbpsのファイバチャネル(FC)のインターフェイスが2つで構成されていても、最大4Gbpsしか利用できない。効率的とはいえない状況だ。

図4 PowerPath/VEの有効性(FC-SAN環境)

 しかし、この問題は第5回で解説した「EMC PowerPath」というソフトウェアで解決する。図4に示した通り、ESXサーバやWindows Hyper-Vにも対応した製品「PowerPath/Virtual Edition」を利用すれば、パスの冗長化やフェイルオーバのみならず、ラウンドロビン(ESXサーバでも定義可能)より優れた負荷分散機能によりすべてのパスがActiveとなり、効率的な運用が可能となる。また、転送速度4GgpsのFCインターフェイスが2つ構成されていれば、最大8Gbpsとして有効的に利用できる。

 このように、PowerPathの導入によりSANのリソースを最大限に有効活用することが可能となり、ストレージが原因となりアプリケーションの性能が低下するというリスクを回避できる。さらに、複雑なサーバ仮想化環境におけるSANの設計が容易となりシステム管理者の負担を軽減できるのだ。

データ容量増加に対する対処は?

 次に、「データ容量増加」の課題に話を移そう。ストレージのハードウェアリソースは、将来の増加を見越して実際の利用容量よりも多めに空き容量を準備するのが一般的だ。しかし、この方法ではハードウェアコストの負担増を招くだけではなく、予想がつかないデータ容量の増加に対処しきれない。繰り返しになるが、サーバ仮想化環境でもこの状況は変わらない(図5)。

図5 サーバ仮想化利用時のデータ容量の増加

 この課題に対しては、連載第12回で解説したストレージの「仮想プロビジョニング」機能が仮想化環境でも有効である。ESXサーバのデータストア(仮想マシンのシステムデータが保存されるボリューム)は、複数の仮想マシンで共有されるケースが多い。仮想プロビジョニングを利用し、このデータストアに対して予め大容量のストレージを準備するのではなく、最低限のストレージだけ割り当てておき、必要に応じて容量を割り当てることでハードウェアコストの削減が実現できる(図6)。

図6 仮想プロビジョニングの効果

 ちなみに、VMware vSphere4にも仮想ディスクに対する「シンプロビジョニング」機能が提供されている。仮想ディスクとは、仮想マシンからはディスク領域として認識される論理データ領域であり、ESXサーバ上ではファイルとして管理されるデータである。このシンプロビジョニングは、前述した仮想プロビジョニングと同様に仮想ディスクファイルの領域に対して必要容量のみストレージを割り当て、仮想マシンには大きく容量を見せる技術である。なお、ストレージで仮想プロビジョニングされたデータストア(論理ボリューム)内で、vSphere4のシンプロビジョニングで構成された仮想ディスクを併用することも可能である。

 このように、ベンダー各社からITインフラの運用を効率化する便利な機能が提供され、ユーザーの選択肢も広がっている。今後は、このような機能を積極的に活用し、増加し続けるデータの課題にも適切に対処してもらいたい。

(次ページ、「バックアップを最適化するには?」に続く)


 

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