参照トラフィックの「冷やかし」と「真剣」を見分ける
「参照トラフィックは多ければいいのでしょうか? 極端にいえば、Webページが『炎上』して参照トラフィックが増えても、コンバージョンにはつながらないし、むしろブランドの価値を下げることもあると思います」――おっしゃる通りです。一般的に、セッション数が増えればコンバージョン数も増えますが、「冷やかし」で訪れるユーザーが増えればコンバージョン率は下がってしまいます。そこで、ページBを例に、参照トラフィックが「冷やかし」なのか「真剣」なのか見分ける方法を紹介しましょう。
まず、閲覧開始ページのアドバンスセグメントで「全セッション」と「参照トラフィック」を表示した状態にします。さきほど説明したように、「全セッション」と「参照トラフィック」の数値がなるべく近いものを探し、参照トラフィックの増加に貢献したページを特定します。次に、ページのリンクをクリックしてドリルダウンし、「コンテンツの詳細」レポートを表示します。
さらに「ページ別の参照元」をクリックしてドリルダウンし、「ページ別の参照元」レポートを表示します。以後は参照トラフィックだけの話になりますので、アドバンスセグメントの「参照トラフィック」をオフにして、通常の表示に戻します。
ページBの参照トラフィックは7万4907のはずでしたが、「ページ別の参照元」レポートではページ別セッション数が14万2310になっています。「ページ別の参照元」レポートはサンプルデータに基づいているので、指標そのものを信用しない方がよいでしょう。とはいえ、ページBの参照元は別のレポートでもlivedoor Blogが多いので、これは確かなようです。参照元の約72%がlivedoor Blogで、他にも2ちゃんねるやブログで取り上げられていることが分かります。
では、それぞれのlivedoor Blogではどのように取り上げられたのでしょうか。残念ながら、「ページ別の参照元」レポートでは、個々の参照元ページが分かりませんので、個々の参照元ページが知りたい場合は「トラフィック」→「参照サイト」レポートのドメイン名をドリルダウンして調べてください。
ページBの直帰率に注目しましょう。このサブドメインの平均は43.59%ですが、ページBの参照トラフィックの直帰率は57.54%もあります。livedoor Blogから訪れたユーザーに限ってみれば直帰率が63.27%もあり、このページに訪れているのは「冷やかし」目的のユーザーがほとんどのようです。
「『冷やかし』ではコンバージョンにつながりませんよね? ページBを作ったのは失敗だった、ということでしょうか」――確かに、成功か失敗かといえば失敗です。しかし、参照トラフィックで訪れたユーザーがすべて「冷やかし」だったかというと、そうではないこともGoogle Analyticsのレポートから読み取れます。同じレポートで、「表示」を「比較」に設定し、比較項目として「直帰率」を選んだのが以下の画面です。
参照元の72%を占めるlivedoor Blogからのユーザーは、直帰率が63.27%もあり、ページBを冷やかし目的で訪れたようです。しかし、他のサイトから訪れたユーザーは、サイト平均よりも直帰率が低く、むしろ真剣に読んでくれたことが分かります。特に「MacTree」(mactree.sannet.ne.jp)と「はてなダイアリー」(d.hatena.ne.jp)から訪れたユーザーは直帰率がサイト平均よりも明らかに低く、livedoor Blogとのユーザー層の違いが分かります。
こうして見ると、参照元コンテンツの文脈の中で期待されるコンテンツが決まるという参照トラフィックの特徴がよく分かります。検索エンジントラフィックの場合、検索エンジンが異なっても、同じキーワードで訪れたユーザーの目的(調査、比較、購入など)は同じであり、新規セッション率を除けば、ユーザーのサイト内での行動はほぼ同じです(関連記事)。一方、参照トラフィックの場合、参照元サイトがそもそもどんなユーザー層に利用されているか、参照元でどのように紹介されたかによって、訪れたユーザーの行動が変わるのです。リンクを張っているのが人間なので、張った人の価値観がユーザーの行動を左右するわけです。
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次回は、検索エンジントラフィックの3回目として、コンテンツと参照元サイトの相性を調べる方法を紹介します。
著者:中野克平(なかの かっぺい)
アスキー・メディアワークス技術部基盤研究課係長(兼デジタルコンテンツ部編成課係長)。ASCII.jpをはじめとするアスキー・メディアワークスのWebサイトについてアクセス状況を解析し、事業を改善する報告をしながら、基盤となる検索エンジン技術、Webアプリケーションの研究開発を担当している。