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Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第2回

イーフロンティア「AI将棋 Ver.17 for Windows」

マルチタッチで将棋の駒を指す感覚を再現した老舗ブランド

2009年11月18日 06時00分更新

文● 塩田紳二

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 Windows 7にいち早く対応したアプリケーションの開発について、メーカーに直接聞くこのインタビュー連載。第2回は、Windows 7の新機能であるマルチタッチに対応した将棋ソフト「AI将棋 Version 17 for Windows」を開発・販売するイーフロンティアに話を聞いた。

 取材対応いただいたのは、企画開発統括部製品企画グループの中島 整氏と企画開発統括部マーケティンググループの大森 博氏(以下敬称略)のお二方。

17年の歴史を持つ将棋ソフトだけに
「単純な移植では、おもしろくない」

―― このソフトには長い歴史がありますね?

大森 「AI将棋」は今回、バージョン17になります。最初のバージョンはMS-DOS用で1993年に登場しています。当時は、WindowsがまだVer.3.1ぐらいだったと思います。その後、Windows 95の登場の頃にWindows対応しました。それから毎年バージョンアップを重ねています。

AI将棋 Ver.17の画面

AI将棋 Ver.17の画面

―― Windows 7への移植には、苦労したのでしょうか?

中島 Windows 7は、Windows Vistaに対して互換性が95%ぐらいあるという話を聞いていました。実際、Windows 7のβ1で試したところ、ほとんど動くことが確認できました。であれば、単純な移植ではおもしろくないと考えました。
 このソフトは、思考ルーチンが毎年更新されていきます。そのため、Windowsのメジャーバージョンアップがなくても、ソフトはバージョンアップしています。
 今回はWindows 7が登場するので、これにタイミングを合わせてバージョンアップする必要がありました。
 単純な移植だけではWindows 7に載せる意味がないと思い、何か新しい機能を取り込めないか考えていたのです。
 最終的に、一番見栄えのする機能であり、Windows 7の特徴のひとつでもある「マルチタッチ」に対応することにしました。もちろん、ハードウェア側がマルチタッチ対応のディスプレーなどを持っている必要はありますが、本物の将棋盤さながらに指で駒を操作でき、左右の人差し指で円を描くように画面を動かすと盤面が180度回転するなど、マルチタッチならではのジェスチャーにも対応します。
 そのためのマルチタッチの技術情報を集めようとしたのですが、当初はなかなか集まらずに苦労しました。実際、マイクロソフトのほうでも開発中の最新機能であったため、たとえばサンプルのコードも動作検証用のものであったり、直接参考にはなりにくいものでした。
 こうした中で、AI将棋にマルチタッチを組み込むという作業はスタートしました。

―― AI将棋 Ver.17ではマルチタッチをどう使っているのですか?

企画開発統括部製品企画グループの中島 整氏

企画開発統括部製品企画グループの中島 整氏

中島 Windows 7では、マルチタッチ対応タブレットをいろいろな形でアプリケーションから使えるのですが、今回はOSが定義しているジェスチャーを取得するという方法で対応しています。ほかに、マルチタッチAPIでタッチしている座標を取得する機能もあるのですが、これは細かい操作が可能な反面、処理が少々面倒になります。
 ジェスチャーは、システム側であらかじめ定義してある指の動き――たとえば二本指でタッチして指を広げる/閉じるといった動作を検出します。これは「拡大」「縮小」というジェスチャーに対応しています。アプリケーション側は、タッチパネルを直接見るのではなく、Windows 7のAPIがジェスチャーを解釈したあと、対応するメッセージ(命令)をアプリケーションに送ります。
 これによりアプリケーション側では常にタッチパネルを監視する必要がなく、ユーザーが操作したときにやってくるメッセージに対応した処理だけを行なえば済みます。
 AI将棋には、もともと画面の回転(上下反転)機能がありました。さらに、画面の拡大/縮小、移動の機能を新たに組み込み、タッチ操作が行なえるようにしました。
 AI将棋 Ver.17では、さらに二本指を使った駒の移動を取り入れています。駒を二本指で選択して、置きたい場所で片方の指を離すと「パシッ」っと音がして駒が置かれるのです。実際に将棋盤の上で、二本指で駒をつまんで動かす様子を再現しました。


AI将棋 Version17 マルチタッチに対応

―― この「リアルな駒の移動」もジェスチャーを使っているのですか?

中島 はい。システム側で定義されているジェスチャーで実現しました。

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