11月12日、アダプテックジャパンは秋葉原のUDXにおいて9月に発表した「Adaptec Max IQ SSDキャッシング」(以下、Max IQ)に関するセミナーを開催した。セミナーでは製品の概要紹介のほか、オリジナルサーバーを手がけるエーティーワークスによるベンチマークの結果も披露された。
最大5倍は嘘ではなかった
アダプテックのMax IQは、同社のRAIDカード用のSSDのキャッシングオプション。インテル製のSSDとRAIDカードのソフトウェアの組み合わせにより、ディスクアレイに読み出されるデータを高速なSSDにキャッシュし、パフォーマンスを最大化するというものだ。対応のRAIDカードにオプションを追加し、BIOSと「Adaptec Storage Manager」というツール上から設定を行なえばパフォーマンス向上が実現するという謳いだ。
今回のセミナーの趣旨は、公称5倍の高速化というMaxIQの実力を披露することだ。セミナーではMaxIQの製品概要の説明の後、まずアダプテック自体で検証したベンチマーク結果が披露。シーゲイトのSAS HDD2台をRAID1の構成で組んだ場合のランダムリード性能をブロックサイズごとに非使用時と比べた場合、7倍(32KB時)の向上。一方、SATA HDDのRAID1構成時でも32KB時で10倍のパフォーマンス向上が見られたという。
とはいえ、あくまでキャッシュなので、導入後すぐに効果が現れるものではなく、数分から数時間学習させる必要があることも説明された。また、参加したユーザーからの「テラバイト単位になるHDDの容量からするとSSDの容量が小さいので、ヒット率はあまり高くないのでは?」という指摘のとおり、大容量のデータ読み出しにはあまり有効でないこともはっきりしている。現状はランダムリードが多いWebサーバなどの用途に最適としているが、どのような構成でもっとも効果が出るのかは、同社自体も手探りのようだ。
エーティワークスが試すMaxIQの実力
こうした課題を解決するためには、なによりさまざまな環境での実測テストを繰り返していくのが一番だ。今回のセミナーでは、オリジナルサーバーを手がけるエーティーワークスが、MaxIQによるパフォーマンス測定の結果を披露した。
エーティーワークスでは小型・省スペースモデルから拡張性やハイパフォーマンスを確保したモデルまで幅広いサーバを自社開発しており、アプライアンスベンダー等に提供。さらにリンクと共同で行なっている「at-link」ブランドのレンタルサーバーサービスで採用している。at-linkでの稼働数は2009年10月で約9000台を突破したという。
さて今回、エーティワークスではCore2 Quad Q9000 2GHzのCPUを採用した「radserv XGI」という省スペースサーバーにMaxIQを導入し、テストを行なったという。単なるI/Oの転送ではなく、Windows Server 2008上にWebサーバーを構築し、クライアントからランダムにリクエストを出すというより実環境に近い構成でテストだ。測定には、マイクロソフトが提供しているWCAT(Web Capacity Analysis Tool)という負荷ツールが使われた。
最初に披露されたのが静的なページの取得テストである。ここでは約750枚のHTMLファイルをIIS7.0で公開し、WCATでランダムに取得させる。これを数時間続け、サーバーのパフォーマンスカウンタでリード速度とリクエスト数を測定した。
その結果、平均をとるとMaxIQを使用しない場合で約56.6MB/s、MaxIQ使用時には約105.8MB/sとなり約2倍の向上が見られたという。リクエスト数もほぼ倍になっており、処理能力の向上が裏付けられた。
次に披露されたのが、動的なページ取得のテストである。ここでは、IIS7.0がデータベースの2000レコードの中からランダムに選択された値をWebページに表示するというASP.NETのアプリケーションを採用。同じくパフォーマンスカウンタでリード速度とリクエスト数を調べ、平均値を調べた。
こちらも非使用時は28.1MB/sだったが、MaxIQを使用することで平均38.4MB/sに向上した。トランザクション数も214/sから255/sに向上しており、キャッシュの効きにくい動的Webサイトでもある程度パフォーマンス向上に有効であることが示された。
この結果からエーティーワークスでは、は「高速回線を確保できる社内向けのWebサーバーやファイルサーバーに最適」との結論に至ったという。また、Webアプリケーションにも効果が期待できることから、at-linkのサービスのオプションとしてMaxIQを追加したという。