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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第7回

現役音大生と銀座のホステスが、ネットと音楽で目指すもの

2009年11月15日 12時00分更新

文● 四本淑三

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動画は音楽を広めるための広告

――ただ、喜多嶋さんは単なる「絵師」ではない。プロデュースという観点で作品に関わっていると思うのですが。

喜多嶋 映像について言えば、広告的な作り方をしていると思うんです。Treowさんの音楽を広めて行こうというのが大前提で。作品のスタイルが新しすぎて理解が難しかったとしても、映像で引き込んで聴かせるのも可能かもしれない。そこは私が担当していこうと。

――それは成功していると思いますね。「Drain」はアヴァンギャルドな曲調にも関わらず10万再生を超えているし。



喜多嶋 ネットが出てきてすべて変わってしまったと思うんです。企業に頼る必要もなく、自分たちで直に発信できる時代になった。自分がいいと思ったものを、ダイレクトに発信できる。でも、音楽ビジネスが奇麗事だけの世界じゃないのは銀座で見てきましたし、著作権の勉強も高校の時からずっとしていて。

――なるほど。「プロのホステス」の計画的な「犯行」だったんだ。

喜多嶋 こうなることは随分前から予見していました。日本全体の文化が、このままではダメだと思ったんですね。売れないから作らない。メジャーに行ってもお金にならないから作らない。そうやって才能ある人たちがみんな止めちゃったら……。

――と熱く語る喜多嶋さんの隣で黙っているTreowさんですが、上手く口車に乗せられてる気はしませんか?

Treow いや、いろいろ話をしていて方向性は共有しています。

――「Drain」がコラボ第一作ですよね?

喜多嶋 いえ、本当はその前に「first"A"alphabet※3があったんですが、イベント※4があって先に「Drain」を「一週間で作ってくれ」と言われたんです。



※3 first"A"alphabet : ElektLyzeの1stアルバム「Piece of Cipher」(公式サイト)に収録。ニコニコ動画では次期PVの予告編として公開されている

※4 イベント : ボーカロイドマスター(ボーマス)のこと。「Drain」はボーマスに合わせたコンピレーションCD「ワクテカEP」に収録されている。ちゃぁさん、kiichiさん、そしてTreowさんという強烈なコンピ



――あれは一週間で作ったんですか?

Treow 僕は一週間で作ってくれとは言ってないけど?

喜多嶋 そうなんですよ。「作ってくれ」とは言わないんですよ。

――行間を読んでニーズを察する必要があるわけですね。

喜多嶋 みんなに「殿」って呼ばれてますね。

――いや、それすごく分ります。制作に当たってテーマを設定したりします?

喜多嶋 「Drain」は「儚き性衝動」というテーマなんですが、体内の女の恋心、情念みたいなものを、細胞レベルで表現したかったんです。泳いでいる金魚は精子ですし、花は女性器というイメージで、動いている万華鏡も細胞分裂のイメージだったり。曲を聴いたときに、生物のパワーを強く感じたので。

――曲は詞のイメージ先行ですか?

Treow あの曲に関しては詞が先です。ちょっと曲を作ったところで、詞が欲しいと思って。以前からARUKOさんに貰っていた詞がありまして、これ使うからって。

喜多嶋 映像に関しては3人の方に協力をお願いしました。ペインティング素材、プログラミング制御、具象(ハサミや花)描写のアシスタント。作りたいイメージを皆さんに伝えて、自分で作成した素材と3人の素材を合わせて、5日で作っています。

――作曲で念頭に置いている要素はありますか?

Treow 開放感の得られるポイントをいくつか置いて、そこへいかにして滑らかに到達するか。そういうカタルシスを目指しています。それと普通のコード進行からあえて外すようなことを意図的にやっています。

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