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参照トラフィックは新規ユーザー獲得のチャンス (4/5)

2009年11月12日 15時00分更新

文●中野克平/デジタルコンテンツ部編成課

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どうすれば新規ユーザーを増やせるか?

 メディアにしても物販サイトにしてもプロモーションサイトにしても、企業が運営するWebサイトは、新しいコンテンツやサービス、商品を企画して、今までと異なるユーザー層を取り込み、事業を大きくし続ける必要があります。いつも見てくれる(買ってくれる)常連客は、何もしなければそのうちコンテンツ(商品)に飽きてしまい、サイトから離れていきます。新規ユーザーが一定の割合で来続けてくれないとやがて常連客だけになり、 常連客も徐々に減っていって寂れてしまうのです。

 新規ユーザーを獲得するもっとも簡単な手段は検索エンジンからの流入を増やすことだと言われていますが、ASCII.jpの指標の相関係数を調べると(関連記事)、新規ユーザーと密接に関係しているのは参照トラフィックでした。駅前で必死にビラを配って一見客を増やすよりも、常連客から人づてに紹介してもらった方が手っ取り早いのと同じです。

「微妙に話題がずれていませんか? アクセス解析で参照サイトのトラフィックを増やす方法がある、という話のはずなのに、新規ユーザーを増やす話になっていますよ」――まぁまぁ落ち着いて。参照サイトからのトラフィックが増えることと、新規ユーザーが増えることを順に説明します。

 参照サイトと検索エンジントラフィックの違いは、参照サイトは人間が張ったリンクをたどってユーザーが訪れるのに対して、検索エンジンは機械(アルゴリズム)がキーワードとコンテンツの一致度を計算して生成したリンクをたどってユーザーが訪れることです。機械にはコンテンツの面白さや信頼性が分かりませんので、リンクの価値としては参照サイトの方が上です。たとえば直帰率をトラフィック別に見ると、たいていの場合は

ノーリファラーの直帰率 < 参照サイトの直帰率 < 検索エンジンの直帰率

という関係が成り立ちます。トラフィックによってユーザーがサイトを訪れる動機や、サイトに到達したあと読み進めたり離脱したりする理由が異なるのです。

サイト訪問の動機 読み進める理由 離脱する理由
ノーリファラー ブックマークから、習慣的に 追加、更新された情報を読む 欲しい情報を読み終えた
ブックマークから、あのサイトに行けばあるだろう、という見込みで カテゴリーページから詳細ページに向かって、あるはずの情報にたどり着こうとする 欲しい情報ではなかった
メールマガジンやRSSフィードで興味を持って 興味、関心を満たそうとする 欲しい情報がなかった
検索エンジン 知りたい、探したい、欲しいキーワードを検索エンジンに入力して 知りたい、探したい、欲しい情報を得るために読む 情報を得て満足した
情報が得られなかった
参照サイト 他のサイトで紹介され、興味を持って 他のサイトで紹介されたときの興味と一致した情報を読む 情報を得て満足した
紹介のされ方と自分の興味が一致しなかった

 上の表のように、参照トラフィックの特徴は、参照元コンテンツの文脈の中で期待されるコンテンツが決まることです。つまり、参照トラフィックで訪れるユーザーは、もともと潜在的ユーザーである可能性が高いのです。ブックマークしたり、RSSフィードやメルマガを購読するような常連ユーザーではないにしても、何かを探したいという強い動機を持たずに他のサイトからリンクをたどって訪れるので、検索エンジンよりずっと効率的にユーザーを獲得できるわけです。

 では、参照サイトからのトラフィックはどうすれば増やせるでしょうか。「トラフィック」→「参照サイト」レポートで、ASCII.jpのあるサブドメインで、期間Aから期間Bにかけて、セッション数が多かったサイトを見ると、性質の異なるサイトが並んでいることが分かります。

参照サイト

「トラフィック」→「参照サイト」レポートで参照トラフィックのセッション数が多いサイトをリスト表示したところ


 たとえば、Yahoo!ニュース(dailynews.yahoo.co.jp)は何人かのニュース編集者がいて、リンク先を手作業で選んでいるでしょうし、Googleニュース(news.google.co.jp)は自動的に記事を収集しています。はてなブックマーク(b.hatena.ne.jp)や2ちゃんねる(ime.nu)、カカクコム掲示板(bbs.kakaku.com)にリンクを張るのは不特定多数でしょうが、個人ブログ(rakugakidou.net、karzusp.netなど)にリンクを張れるのは基本的にはブログオーナー1人のはずです。

 このように参照サイトを分類すると、攻略方法が見えてきます。たとえばYahoo!ニュースにはトピックスエディターという制度があり、メディア関係者や一般読者がニュース記事のページ下部に表示される「関連情報」という枠を編集できます。もちろんニュースに関連していなければ無効ですが、Yahoo!ニュースからのリンクを自分で設定することも理論上は可能です。あるニュースサイト運営社に聞いた話では、「結構なトラフィックを稼がせてもらっている」ということでした。

 他社サイトでどう紹介されるか、コントロールとまではいかないまでも、影響力を行使する方法があるわけです。掲示板やブログも、それぞれのサイトで好まれるコンテンツの傾向がありますので、コンバージョンの効率を見ながらコンテンツを投入していけば参照トラフィックを稼ぎ出せます。

 しかし、参照サイトは数が多いのでそれぞれにリンクを設定するのは大変です。そこで、新規ユーザーを紹介してくれそうな参照サイトはどこか、をGoogle Analyticsで分析します。といっても、「参照サイト」レポートの「表示」で、「比較」を選び、「新規セッション率」を比較対象にするだけです。

新規セッション率の比較

「参照サイト」レポートの「表示」で、「比較」を選び、「新規セッション率」を比較対象にしたところ

 参照トラフィックのセッション数が多いのに、新規セッション率がサイト平均よりも高いサイトとして、Yahoo!ニュース、Googleニュース、Wikipedia日本語版、Ubuntu Japanese Team、goo検索があることが分かりました。つまり、これらが固定客になる可能性があるのに、リーチできてないユーザーが多いサイト、ということになります。

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