マンガの流通経路が確かに変わった!?
かつて日本のマンガやアニメが海外に浸透するには、最初にテレビアニメが放送されて、それが起爆剤になることが多かった。フランスがそうだったし、アジアの国々でも、マンガの海賊版の存在もあったが、アニメのパンチ力こそ普及の原動力だった。まずアニメが広がるのは、マンガよりもリテラシーを必要としないからだろう。その後、アニメの原作であるマンガの出版がはじまり、やがて日本のコンテンツ文化がさまざまな形で浸透する。しかし、いまはアニメからネットへ行き、そこからマンガというパスができてきている。それどころか、まずネットがあり、そこからアニメやマンガに流れている。ネットが、ファーストコンタクトになってきているのだ。
信谷和重氏に紹介いただいた、経産省がJAPAN EXPOの会場で行ったアンケート結果でも、ジャパンコンテンツの普及において、ネットの占める役割は大きかった。ジャパンコンテンツの認知経路は、ウェブが92.9%と圧倒的。次いで新聞・雑誌の31.4%、テレビの28.2%となる。JAPAN EXPOは、フランス語圏の来場者が80%を占めるので、ほぼフランス人へのアンケートといってもよい。興味ジャンルは、マンガが68.5%、アニメが50.7%、音楽が45.1%、ゲームが40.4%と、マンガの比率が高い。
つまり、ジャパンコンテンツが浸透して、マーケットとして成熟する過程において、ネットが重要な役割を果たすと考えられる。事実、フランスのマンガ専門店で聞いた話では、BL(ボーイズ ラブ)はネットで話題になり、後から出版が来たそうだ。経産省のアンケート結果では、ジャパンコンテンツに対する支出では、約50%の人が1ヵ月に10~49.9ユーロ(約1350円~約6800円)使っている。50ユーロ以上使う人も、20%近くいる。ネットがあって、はじめてこうしたジャパンコンテンツ消費の構造が成立していると考えられる。
ジャパンコンテンツへのファーストコンタクトがネットになってきたということは、フェーズが変わったということだ。彼らは、ネットという自在眼鏡を持つことによって、平均的な日本人より、ジャパンコンテンツを手に取るように見ている。「ASCII Research Interview」でも登場してもらった、米国の有料アニメ配信サイト「クランチロール」などは、それを象徴する例のひとつだろう。ネットという地平では、クラウドコンピューティングがこれから何を起こすか? フェイスブックのようなSNSやソーシャルゲームがどうコンテンツと協調してくるか? といった、よりダイナミックな変化の時代を迎えつつある。そして、2015年にネット人口35億人へと向かう巨大な波の上に乗っているということを認識すべきだ。
まさに「デジタルを味方につけろ!」というべき状況なのである。