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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第93回

次の自動車社会とケータイとの関係

2009年10月29日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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ワカモノとケータイとクルマの未来

 カーナビがどんどんネットに繋がることで、これまでにないサービスが利用できるようになる。しかしカー・インフォマティクスは、日本国内においては有望な市場ではない、と考えたくなるのは僕だけだろうか。それはクルマとのつきあい方が問題だ。

 最近大学生と話していると、クルマが欲しい、あるいはクルマに対するあこがれを抱いている学生は5割程度だった。この結果にはショックを受けた。僕らが大学生のころ(10年前)に聞いたとしたら、クルマは要らないという人の方が珍しかったはずだ。

 クルマに限らず、最近のワカモノは消費や所有によってライフスタイルが形成されるという感覚自体が怪しくなってきているようにも感じる。詳細な調査が必要であるが、価値観が変わってきていることは確かなようだ。

 一方でケータイを身体の一部のように持ち歩き、常につながっているコミュニケーションを生活の中心に置いている。毎日肌身離さず生活、夜になると枕元で必ず充電して、また翌朝になるとまた持って出かける。

 この様子は、現状ではこまめに充電が必要な電気自動車のような存在に近く、個人向けの電気自動車のような移動手段をケータイの延長としてとらえることができれば、とても可能性がある世界のように思えてくる。将来のモビリティはパーソナルな志向が強まるのではないか。

 自動車がパーソナルなケータイと連携するコンセプトは、以前から披露されていたものだった。たとえば2007年の東京モーターショーでは、アウディがMetro Project Quattroというコンセプトモデルで、ケータイのような個人が持ち歩く端末がクルマの鍵となり、情報手段やミュージックプレイヤーとなる姿を見せた。

Audi Metroproject Quattro

Audi Metroproject Quattro。ケータイ型の常に持ち歩く端末が人とクルマとの関係を司るイメージが展示されていた。2007年の東京モーターショーでの展示

 今回紹介したケータイとカーナビの連携も、クルマがよりパーソナルな道具になっていく過渡期に見える。モーターショーでは電気自動車の充電状況をケータイメールで知らせる仕組みなど、電気自動車へシフトしていく社会の流れをケータイと絡めて表現する様子はとても納得感があるものだ。

 ケータイの使われ方が、将来の若者に受けいれられるクルマとクルマ社会の姿を創る。そう考えると、今回のモーターショーもなかなか見どころがあったのだった。

ヤマハやホンダは電気駆動の二輪車展示に積極的だった。パーソナルな電気自動車から、電気自動車社会の幕開けを迎えるシナリオになるのだろうか

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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