このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

元祖NIerのネットワンのトップが現在のIT業界にもの申す

ネットワン吉野社長が語る「仮想化が普及しない理由」

2009年10月27日 09時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

仮想化が普及しないのは
インテグレーションがないから

 もう1つの強みは、やはりマルチベンダーという同社の立ち位置であろう。ネットワンというとシスコというイメージが強いが、ルータ・スイッチだけでもジュニパーネットワークス、アラクサラネットワークス、アルカテル・ルーセント、フォーステン、SIIなど実に幅広いベンダーの製品を扱っている。最近ではファウンドリーを買収したブロケードの取り扱いも進めているが、「『浮気か?』と書かれましたが(笑)、そうではありません。一言でいえばお互いの関係を深掘りする戦略的な関係を強めていこうということ。お客様のことを考えれば、現在は1社ではやれなくなっているのが実態」と吉野氏は語る。仮想化に関しても「サーバ・ストレージであればやはりVMwareさんの実績は高いし、シンクライアントであればシトリックスさんが機能面では強い」(吉野氏)と得意分野によって使い分ける。

今年はブロケードとの提携を発表したが、扱うベンダーは多種多彩だ

 とはいえ、多くの調査を見ると、日本は仮想化の普及率が欧米よりも低い。これについて吉野氏に聞くと、「仮想化製品は米国のベンダーが主導してサーバに入れ、パッケージ化されている。欧米ではこれらをインテグレーションすることによって、ユーザーの利用が増加している。一方、日本での問題は、サーバに入っているのに誰も使っていないということ。その意味ではインテグレーションしている企業が少ない。既存のSIerは、単にパッケージを売っているだけ」と手厳しい。

 もう1つは仮想化の効果がユーザーに対して明示できていないことだという。「昨年は、数十億円規模の事例を手がけたのですが、もともとその証券会社様は2000台規模のサーバとストレージを持っていて、ネットワーク構築・運営のみ弊社がやっていました。しかし、お客様がIT予算を削減したいということで、VMwareさんに仮想化の効果について聞いたら、先ほどのソニー様の件があり、ネットワンさんに聞いてくれとおはちが回ってきました」(吉野氏)。この証券会社も、最初はネットワークインテグレータの同社には荷が重いと感じていたようだが、2~3ヶ月かけてネットワンが性能やコストを数値化して効果を見せたという。

吉野氏が見据えるクラウドの姿とは?

 次に吉野氏が見据えるのは、やはり「クラウド」である。9月にはオープンなクラウドサービス市場の創出支援を目的とする「クラウド・ビジネス・アライアンス」を発足。複数の事業者がAPIを経由して、異なるクラウドを相互接続し、ビジネスにつなげていく。そのための検証環境や技術支援をネットワンが提供するというアライアンスで、販売パートナという発想はゼロだという

 「クラウド・ビジネス・アライアンス(CBA)」が検討対象とする領域と、評価・検証する各種技術要素(同社の資料より抜粋)

 今後のクラウドの推進について吉野氏は「クラウドという『環境』を仮想化やNGNのような技術を使って実現していくということです。たとえば、仮想化により、今までアプライアンスとして提供されたものは統合され、信頼性も高まるし、サーバも台数も減ります。安心・安全な環境は物理的な数を減らすのが一番。あとはきちんとした安定した管理体制とツールがあればよい」と語ってくれた。

 こうしたネットワークからサーバ・ストレージ、仮想化、そしてクラウドといった技術の統合化への流れは、この3年の大きなうねりだ。担当もネットワーク・セキュリティの専門誌であった「NETWORK magazine」からハードウェア、開発、クラウドまですべてを統合した「ASCII.technologies」にリニューアルした経緯を間近に見てきただけに、吉野氏の話はいちいち頷けるものがあった。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ