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「使用済の抱き枕」でも返品OKの反常識サービス (2/2)

2009年10月22日 22時53分更新

文●三浦たまみ

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「20日までなら返品OK!」の独自サービス

 河元さんが1.の「枕に関する豊富な情報を提供すること」を重視したのは、「最適な枕選びの第一歩は豊富な情報を入手すること」だから。


 「枕の素材はどんなものがあるかなどを分かりやすく伝えたいと思いました。中でも大切なのは、各素材のデメリットもきちんと伝えること。枕には綿、低反発、ソバガラなどさまざまな種類がありますが、それぞれメリットもあればデメリットもある。毎日使う枕だからこそ、デメリットも把握して商品を選ぶべきだと思ったんです」

 2.「返品制度」は、河元さんがネットショップを立ち上げる際にもっともこだわった部分です。衛生用品であるため、「一度購入したら返品不可」というショップも多い中、同店では20日という長期間、無条件で返品・交換に応じています。

「お客様が納得のうえで商品を購入しても、本当に自分に合うかどうかは、使い慣れた自分の布団で何日か寝てみなければ分かりません。私がショップをやるからには、返品・交換は当然のサービスとして対応したいと思っていました」

 当然、返品リスクを抱えることになりますが、現在、同店の返品率は約3%。長期間の返品に応じている割には、少ない数字といえます。

「返品が少ないのは定価販売に徹しているからだと思います。過去、何回か値引き販売をしたのですが、そのとき返品率はグっと上がりました。以来、うちは定価にこだわり、『他店より高いけど、枕専門店の販売する枕だから買おう』とお客様に認めてもらえるお店を目指しました。定価でも買おうと思うお客様は、真剣に枕を探している方がとても多いので、気兼ねなく返品制度を活用し、最適な枕を見つけてほしいと思っています」

 もちろん、枕に特化して販売するお店のプライドにかけて、3.の「枕に関する品揃えはどこにも負けないようにする」ことも重視しています。現在の商品点数は5500点。これは他店に比べかなり多いといえますが……。

「ここ数年、ほぼこの数字で推移しています。実は毎年、1000商品ぐらいは新商品を投入していますが、それと同じぐらい、売上の芳しくない商品や返品率が高い商品の取り扱いをやめているんです。その意味では商品点数を急増させることは難しいのですが、おすすめできる商品だけをラインアップしている自負はあります」

 寝具のなかでも「枕」という商材に特化した時点で、すでにユニークな存在になったはずですが、河元さんはさらに「お客様に自分で選んでもらう」という明確なコンセプトを掲げ、なおかつ自身の体験をもとに「こんなのがあったらいいな」と思える独自のサービスを次々と打ち出していきました。それが顧客の絶大な支持を得ることになり、年商3億円を突破する勢いにつながったのです。


 河元さんは『低反発.com』『抱き枕.com』など、特定の機能・材質の枕だけを販売するお店を別サイトとして次々と立ち上げています。次回はその裏事情に迫ります。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

 多くのWebサイト制作・コンサルティングを手がけている株式会社サーフボード ディレクターの矢満田雄介さんに、「ネットショップにおける商材選びのポイント」についてお話を伺いました。



ネットに適した商材+サービスで勝負しよう

 売れる商品はありますか――? これは当社がコンサルティング業務を担当する際にお客様に必ず確認していることです。どんなにやる気があって潤沢な資金のある人でも、売れる商品がなければうまくいくはずがありません。いくら見栄えのよいサイトを作成し、販促に莫大なお金をかけたとしても売れないものは売れない。「自分の店で何を売るか」、すなわち商材選びは、それほど店にとって大切な要素なのです。

 一般にネットショップにおいて販売に適しているのは、以下のような商材です。

  1. リピート率の高いもの
  2. 市場への供給が不十分なもの
  3. 希少性の高いもの
  4. 実店舗で買うことに抵抗のあるもの(カツラ、下着など)
  5. 実店舗では、どこで販売しているのか分からないもの
  6. 価格、機能の比較など、購入に際して豊富な情報が必要なもの
  7. サイズ、重量などの問題で運搬が困難なもの
  8. 悩みごとを解決してくれるもの

 たとえば、河元さんが販売する枕は、豊富な情報を提供すべきであるという点で6.に該当しますし、抱き枕のなかに、長さ3mもある商品があることを考えれば7.も当てはまります。また同店の場合、市場にはまだないが、「あったらいいな」と思えるオリジナル枕も開発していますから、その意味では2./3.なども関係しています。このように、自分の扱いたい商材がネットに適しているかどうかを、最初に考えていきましょう。


「○○ができるのはウチの店だけ!」を明確に

 続いて、扱いたい商材に、独自のサービスを付加できるか考えます。河元さんのお店の場合、「20日間の返品制度」が代表例です。他店にはないサービスをいかに提供できるかが差異化の第一歩。過去に当社が担当した寝具販売のネットショップでは、布団を購入したらそれまで使用していた布団を無料で回収してくれるサービスを用意していました。他店がやっていないことで、かつ、お客様が喜んでくれると確信できるサービスであれば取り入れる価値は十分にあります。

 独自サービスを提供できるようになれば、仕入れ商材を扱う場合でも、価格競争に巻き込まれずに顧客の支持を得られます。ただしどんなショップも、オリジナル商品の開発は常に視野に入れたいところ。ネットショップが乱立している現在、オリジナル商品の開発・展開こそ、生き残りを左右する切り札になるといえるからです。


矢満田雄介:ネットショップをはじめ企業サイトの企画・構築・支援を手掛ける株式会社サーフボード東京営業所所長、ディレクター。主に関東圏内にある企業のサイトをディレクション。ユーザビリティを考慮した“売れる”サイトづくりに定評がある。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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