VIRUALIZATION FORUM 2009基調講演&パネルディスカッションレポート
日本版VMWorldで見えた仮想化の未来とユーザーの本音
2009年10月21日 06時00分更新
10月20日、ヴイエムウェアのプライベートイベント「VIRUALIZATION FORUM 2009」が開催された。模様眺めからいよいよ普及のフェーズに入った仮想化のトップベンダーのイベントだけに、注目度は高く、参加者も多かった。ここでは基調講演と続いて行なわれたパネルディスカッションの模様を見ていきたい。
仮想化のメリットは単なるコスト削減ではない
VIRUALIZATION FORUM 2009は仮想化をメインと据えるイベントでは国内で最大級の規模で開催されるもので、40社のパートナーと、62種類のセッションが開催される。8月に米国で行なわれた「VMWorld 2009」に比べれば規模は小さいものの、昨年に比べて倍になる4500人の登録になったという。
基調講演の壇上に立った米ヴイエムウェア アジア パシフィック・ジャパン ゼネラルマネージャーのアンドリュー・ダットン氏は仮想化のメリットについて「現在、多くのIT投資はシステムを維持することだけに費やされている。VMwareは、単なるコスト削減を提供するだけではない。削減したコストや資源を再配分し、新たにイノベーションに企業が前進できる。多くのCEOやCFOが着目しているポイントはここだ」と語った。米国企業のCIOの「私が引退するとき、仮想化により、会社のラックは1つになるだろう。最終的には18対1まで統合したい」というコメントを引き合いに出し、ITリソース活用のメリットについてアピールした。
昨今、ヴイエムウェアはサーバ仮想化の製品のみにフォーカスしているわけではない。アンドリュー氏は「サーバの仮想化は仮想化の旅路の第一歩に過ぎない。私たちはデスクトップやクラウド、開発/テストまで、すべての仮想化ソリューションを提供している。私たちの目的はダイナミックで俊敏なインフラの提供だ。競合に比べて4~5年先んじており、さらにその差を拡げようとしている」と、インフラ全般の仮想化におけるヴイエムウェアの先進性を強調した。
ユーザー企業が感じる仮想化のメリットとは?
基調講演の後には中外製薬、日本ユニシス、三菱東京UFJ銀行などのユーザー企業を交えたパネルディスカッションが行なわれた。
中外製薬はフリーソフトの頃のVMwareを使っており、サーバ統合を進めてきたという。中外製薬の永井秀明氏は「小さなサーバをどんどんVMware上に『巻き取って』いったら、結果的に30台くらいのサーバを統合していた。近年は製薬業界の規制上バリデーションが必要なシステムやバックアップのセンターなど、信頼性を要求されるサーバもVMware上に載せています」とサーバ統合の経緯をこう語った。いろいろなサーバで統合してきた結果、実績として信頼性やパフォーマンスに関する不安は解消されているという。
クラウドサービスの展開を進めている日本ユニシスの角泰志氏は「私たちはすでにサーバを作っていませんが、仮想サーバの世界では、サーバベンダーの違いが関係なくなる。どのサーバから調達してきても、同じレベルのサービスが提供できる。あと、この1年の仮想化でのトラブルはゼロ。自動化も進められるし、サーバ管理という点でも非常に楽」と仮想化を利用したクラウド構築について語る。
ユーザー側のクラウドに対する意見としては「弊社でも一部SaaSの利用やイントラクラウド構築を慎重に進めている。今後、クラウドが社会インフラになる可能性があるが、外部の活用に舵を切るときが来ても大丈夫なように、基礎的な技術はきちんとカバーしておきたい」(永井氏)などがあった。
また、三菱東京UFJ銀行は、300社のグループに対してクラウドベースのサービスを提供しているほか、デスクトップや開発/テスト環境など仮想化の全面展開を進めているという。三菱東京UFJ銀行の根本武彦氏は「5万台のOA系のPCが切り替え時期になっている。資源を効率的に利用できないかと考えていた。どこでもアクセスして利用できるというメリットもあるし、情報セキュリティの観点でもシンクライアントは好ましい。現在、試験的に3000台くらいのシンクライアント化を進めている」とVMware導入について語った。
21日には昨今力を入れるデスクトップの仮想化に関する本邦初のデモやQ&Aセッション、展示会場のツアーが行なわれる予定となっている。