調整を繰り返す日々もまた楽しい
いよいよ詳細設定に移ろう。まずは部屋のサイズの設定。部屋の広さや壁からの距離、視聴位置までの距離などをなるべく正確に入力する。インテリビームである程度の数値は測定済みだが、実際にはそれなりの誤差があることがわかる。
次に「ビーム調整」だ。まず水平調整では、各チャンネルの左右の位置を微調整する。調整を始めるとスピーカーからテスト音が再生されるので、まずはとにかく数値を大きくいじってみよう。実際に音の位置が変わっていくことに気付くはずだ。
調整の順番は大まかに位置を決めてから微調整していくこと。いきなり1度ずつ微調整しようとしても違いがわからない。フロントチャンネルの場合は、画面の位置とも関わりがあるので、画面からあまりはみ出さない位置に調整してやると画面と音の一致感が高まる。左右の音の位置がフロント、サラウンドで揃っていることも重要だ。これを各チャンネルの数だけ調整する。
続いて垂直角度の調整。これは音像の高さを合わせるもの。テレビの高さと本機の設置位置が離れている場合は、きちんと調整してやることで画面中央からセリフが聴こえるようにすることができる。
これらの設定を済ませたら、もう一度さきほど再生した映画や音楽でチェックしてみよう。サラウンド感がさらに良好になっているはず。この手の調整はやり出すとキリがない側面もあるので、根を詰めすぎないこと。人間の耳はその日の体調や気分によっても感度が変わるので、気になる部分があれば日を置いて再度調整を繰り返すといい。
個人的には、AVアンプを手に入れた当初は毎週微調整をしていた。最初のうちはその日によって調整結果は大きく変わるが、1ヵ月も経つとだんだんと調整結果があまり変わらなくなる。あとは、部屋の模様替えをしたり、新しい機器を追加したときなど、音に変化が出そうな要因が加わったときだけ再調整をするといい。本機の場合は、カーテンの変更なども音の影響の一因になる。
家の壁を張り替えてもいいぐらいの実力
上記で90~95点までは行くはず。ほぼ満足できるレベルと言える。残りの5点は、部屋の改築になるのでムリにおすすめはしない。それは反射する壁の変更や強化だ。本機は壁の反射を利用しているので、実際のところ音を出しているのは部屋の壁だ。スピーカーのユニットがさまざまな素材で音質を練り上げているように、音は結局のところ振動する素材の音の影響を受ける。
例えば右側は壁紙を貼った木の壁、左側はガラス窓+カーテンという環境では左右で音色が変わって当然。部屋の壁を響きの良い厚い木材に変えれば、コンサートホールのようなリッチな響きを加味することもできるだろう。自動音場補正である程度音色の補正も行なわれるので、あまり神経質になるのも精神衛生上良くないが、そのあたりまでこだわるのがいわゆるオーディオマニアだ。
お手軽なワンボディのホームシアターシステムで、ここま言及するのはどうかと思うし、メーカーとしても「自動調整で手軽に使える」ことをメリットとしているので、実際にどこまでやるかはユーザー次第。ただ、お手軽なホームシアターシステムと断じてしまうにはもったいなと感じるだけのポテンシャルが本機にはあるということだけは明記しておきたい。
これだけの伸びしろのある製品は、使っていて実に面白い。本機は同じ予算で5本のスピーカーとサブウーファー、AVアンプを揃えることもできるだけの高価なモデルだが、そのサラウンド再現の実力は極めて高い。予算はあっても、物理的に5本もスピーカーを置くことはできないという人にとっては、うってつけの製品と言える。