発想の転換で生まれた「壊れないコネクター」
そのもっともわかりやすい例が、有線LANのEthernetコネクターである。VAIO Xのボディー厚の「13.9mm」は、一般的なEthernetコネクターの厚みよりも薄い。そのためEthernetコネクターを内蔵するには、特別な仕掛けが必要になる。VAIO Xで採用されたのは開閉式のコネクターだ。使う時だけ口が開き、コネクターの形状になるよう工夫されている。
だが、このコネクターには形状以外にもうひとつ特徴がある。それは「外れる」ことだ。ケーブルを強く引っ張ると、コネクターの片側がポロリと外れるようになっている。といっても壊れたわけではなく、すぐにまた取り付けられる。必要以上の力がかかると、コネクターが破壊されないように外れるようになっているのだ。
笠井「ケーブルを引っかけて万一壊れて修理になってしまえば、その間お客様は使えなくなってしまいます。そういう状況を想定し、壊れるのではなくあえて『外れる』ような構造を考えたのです」
林「当初はXJACK※1のようなタイプも考えたのですが、構造が複雑になってしまう。そこで出てきたのが、バイオノート505(PCG-505)でモデムコネクターに使っていた、横に開くタイプです。それを縦にし、さらに品質保証側から要望があった『壊れず、外れる』という要素を加えたのが、今回のコネクターです」
※1 1990年代に3Com社やUS.Robotics社などが、カードモデムで採用していたプッシュ・ポップ式のコネクター。露出したコネクターの上からケーブルを差し込む。
笠井「とはいえ、『ある一定の力までは外れない』コネクターを作るのは、かなり大変なことでした。当初は割と簡単に外れてしまっていて……。頻繁に外れるようでは、逆に使い勝手が悪くなりますから。本当に『壊れる可能性がある時だけ外れる』ようにしたかったんです」
そのほかに、同様のストレステストとして行なわれているのが、静電気の影響を見るテストだ。ボディーへ実際に放電して、それがシステムの動作にどのような影響を与えるか、といったことが測定される。取材で披露されたデモでは、実際に動作中のパソコンに対して放電しても、そのまま何事もなかったように動き続けていた。これらのテストはVAIO Xにだけ実施するものではなく、その機種の特徴に応じ、それぞれ開発段階で行なわれるものだ。
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