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「お菓子な」バーガー生んだシンデレラ主婦の企画力 (2/2)

2009年10月14日 14時49分更新

文●三浦たまみ

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”定番”をさまざまな商品に応用する

 篠さんが商品開発のヒントにしているのは、本屋で売っているスイーツ本をチェックすることや、コンビニやスーパーを訪れることなど。日常生活の中でアンテナを張っていれば、ヒントは十分に見つけられると言います。

「たとえば、スーパーのハーゲンダッツのアイスクリームコーナーに行くと、アップルパイ味、プリン味など、その時々の流行をおさえた商品が並んでいますよね。売れる商品を見極め、顧客の心を掴むのがうまいなあと感心しますし、参考になります」

 また、“流行は10年周期”も意識していると言います。

「プリン、チョコレート、チーズケーキなど、一度流行したものは10年経つとまた再燃する傾向があるんです。だから、それまでどんなものが流行したのか分析しておけば、流行する前の段階でこちらからブームを仕掛けていくこともできると思います」

シリアルマミーの店主、篠さん

 ところで、シリアルマミーの商品ラインアップで目を惹くのは、フレンチトーストタイプの「デセールキャラメル」をはじめ、「ほろ苦キャラメルのとろけるチーズケーキ」「キャラメルバターケーキ」など、キャラメルという名のつく商品が多いこと。これには理由があります。

「開業当初に開発した自家製キャラメルソースがあるんですが、このソースは店の原点と言えるもので、味には絶対の自信があります。キャラメルは流行に左右されない“定番商品”ですから、商品開発の際はこのソースを応用して何か生み出せないか、常に考えています」

 さまざまなお菓子に応用できるということは、ゼロから開発する必要がないという点で合理化にも結びつきます。シリアルマミーは大量生産せず、少数精鋭の職人による丁寧なお菓子作りを徹底しています。その意味でも、ある程度の合理化につなげていくことは理に適っているのです。

 昨年10月には、日本最大級のショッピングモール「イオンレイクタウン」(埼玉県越谷市)に出店した『シリアルマミー』。今回の目玉商品は、自家製キャラメルを応用した生キャラメル。さらなる飛躍を図ります!


 次回からは、『まくら株式会社』という枕専門ショップの取り組みを紹介します。『枕ぐっすりショップ』『低反発.com』などさまざまなショップを複数運営しますが、どのサイトも寝具全般ではなく、枕にスポットを当てたことで大成功しています。お楽しみに。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

セミナー講師や大手ネットショップの社外取締役として活躍されているスタイルビズ代表取締役の村山らむねさんに、商品開発についてお話しを伺いました。



ネットショップの成功には「オリジナル商品」が必要不可欠

エキスパート

村山らむねさん

 2000年前後にオープンしたネットショップならともかく、この数年以内に開業したお店が、仕入商品だけで成功する確率は極めて低くなっています。できれば開業前から、オリジナル商品の開発を見越した事業計画を立てておくことをお勧めします。オリジナル商品は、仕入商品に比べて利益率を高く設定でき、多くの人に受け入れられるものを提供できれば、もっとも効率よく利幅を大きくできます。

 『シリアルマミー』の場合、すべての商品を店主の篠さんが考案した完全オリジナル商品として製造販売しているため、安売り競争に巻き込まれることもなく、当然、利益率も高く設定できます。着目したいのは、売れるからといって大量生産に走るわけではないこと。篠さんの信条は、心底おいしい! と思うものだけを販売すること。その信条通り、原価率を考え、人件費も考慮しながら、自分達が製造できるベストな量をしっかりと見極め、それ以上をやみくもに作ることはしていません。このように、守るべきラインを明確に引いておくこともネットショップにおいて非常に重要な戦略の1つだと思います。


「こうあるべき」という既成概念に囚われない

 シリアルマミーが賢いのは、試行錯誤の末に作り上げたキャラメルソースを、「デセールキャラメル」「ほろ苦チーズケーキ」「ぐるぐるキャラメルシュー」など、数多くの商品に応用していること。こうした“一点集中主義”の姿勢は、自家製キャラメルソースが他店では絶対にマネできないと自負しているからこそできる戦略ではありますが、商品開発費を最小限に抑えることができる意味でも有益だと思います。

 もう1つ、特筆すべきことは、マスコミを上手に活用した話題作りがうまいこと。篠さんの明るいキャラクターあってのことですが、動物の形をしたケーキ「シリマミ動物園」にせよ、お弁当の中身をデザートで表現した「おかじゅう」にせよ、テレビや雑誌の誌面に登場したときのインパクトは抜群! ケーキを動物に見立てるという発想は、一流シェフと呼ばれる人から見れば“ありえない”という発想かもしれません。しかし、“こうあるべき”という既成概念に囚われていないからこそ、多くの人に愛される商品を生み出すことにつながっているのだと思います。


村山らむね(青山直美)有限会社スタイルビズ代表取締役。慶應義塾大学法学部法律学科卒。東芝に勤務後、1995年「村山らむね」として個人ホームページ「らむね的通販生活」立ち上げ。 2000年株式会社イーライフに入社し主にウェブプロデュースやスタッフ教育、個人情報保護マニュアル作成などに携わる。2004年有限会社スタイルビズ設立。 2005年ケンコーコム社外取締役就任。現在、経済産業省消費経済審議会特定商取引部会委員など、多数の委員も任されている。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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