1万円台のビデオカードとしては最高性能を実現
3DMark Vantage
早速ベンチマークスコアを見ていこう。
グラフ1は、「3DMark Vantage」の総合スコアだ。3DMark Vantageには、旧AGEIAが開発した物理演算ライブラリ「PhysX」を利用するテストが含まれている。旧AGEIAはNVIDIAに買収されており、GeForce 8以降のシリーズでは、PhysXをGPUで高速に処理するためのPhysXドライバが提供されているが、Radeon HD系GPUではPhysXドライバが用意されておらず、CPUで処理するしかないので、3DMark Vantageのスコアは低くなりがちだ。しかし、PhysXを採用したゲームソフトはそれほど多くないため、3DMark Vantageの総合スコアだけから、実際のゲームパフォーマンスを推し測るのはやや早計であろう。
そのことを踏まえて、結果を見てみよう。Radeon HD 5770のスコアは、旧シリーズのハイエンドモデルであるRadeon HD 4890のスコアにかなり迫っている。同じクラスのRadeon HD 4770との比較では、2~4割程度Radeon HD 5770が上回っており、コストパフォーマンスは格段に向上したといえるだろう。NVIDIA製GPUとの比較では、Radeon HD 5770はもちろん、下位となるRadeon HD 5750のスコアも、GeForce GTS 250を上回っている。前述したように、PhysXをサポートしていないにもかかわらず、同じクラスのGeForce GTS 250のスコアを上回っているのは素晴らしい。PhysXを除いた、純粋な3D描画性能はGeForce GTS 250を大きく凌駕しているというわけだ。
次に、3DMark VantageのFeature Testの結果を見てみよう。Feature Testの結果は、すべて「Performance」時のものである。
Feature Test(グラフ2)は、Texture Fillテストで、テクスチャ転送時のフィルレートを計測するものだ。その結果は驚くべきもので、Radeon HD 5770は、旧シリーズのハイエンドモデルRadeon HD 4890やNVIDIAのハイエンドモデルGeForce GTX 275のスコアを上回っている。
Feature Test2(グラフ3)は、Color Fillテストで、色を変えながらピクセルを塗りつぶしていくテストだ。Radeon HD 5770/5750のスコアは、旧シリーズのRadeon HD 4770はもちろん、ライバルのGeForce GTS 250を上回っている。
Feature Test3(グラフ4)は、バンプマッピングをさらに進化させた複雑な凹凸の表現が可能なParallax Occlusion Mappingと呼ばれるマッピングを行なうテストであり、ピクセルシェーダの演算性能によって結果が左右される。このテストにおいても、Radeon HD 5770は、Radeon HD 4770はもちろん、Radeon HD 4890やGeForce GTS 250を上回るスコアを出している。
Feature Test4(グラフ5)は、GPU Clothと名付けられたテストで、布(旗)が風にはためく様子の物理シミュレーションを行わせるものだ。主に、バーテックスシェーダの性能を見ることができる。こちらは、GeForce GTS 250には及ばないものの、Radeon HD 4770に比べるとスコアは向上している。
Feature Test5(グラフ6)は、GPU Particlesと呼ばれるテストで、数十万もの微粒子(パーティクル)を風に乗せて流し、透明な物体の凹凸状態を可視化するものだ。スコアは、バーテックスシェーダとジオメトリシェーダのパフォーマンスに左右される。このテストの結果もRadeon HD 5770は優秀であり、Radeon HD 4770やGeForce GTS 250を上回っている。
Feature Test6(グラフ7)は、Perlin Noiseテストで、3つの異なる周波数から演算によって生成されるノイズをRGBの各色に割り当てて表示するものだ。ピクセルシェーダの演算性能によって結果が左右されるテストだ。このテストでは、Radeon HD 5770が非常に優秀な結果であり、GeForce GTS 250やRadeon HD 4770はもちろん、NVIDIAのデュアルGPU構成のハイエンドモデルGeForce GTX 295や旧シリーズのハイエンドモデルRadeon HD 4890をも上回っていることに驚かされた。
(次ページへ続く)
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