ソフトウェア開発も低コストを重視
FeliCa Liteは低コスト化を重視して開発されたので、ICチップ自体のコストはかなり低い。シール型1枚で100円程度のコストも実現可能という。だがICチップ自体と同じくらいに重要なのは、FeliCa Liteを使うソフトウェアの開発コストだ。
例えばFeliCa Liteでは、ソフトウェア・サービス開発コストの低減のために、アドビシステムズのFlashやAdobe AIRの開発環境でアプリケーションを構築できる「FeliCa SDK for Adobe AIR/Adobe Flash」を用意した。複雑なカスタムアプリケーションをイチから開発しなくても、容易に対応ウェブサービスを構築できる。今回のアニメNewtypeチャンネルでも利用されているという。現在はベーシック版が提供されているが、今後はより高度な機能を持ったスタンダード版を、アドビストア経由で配布する予定とのことだ。
紙のカードがICカードになる日が現実に
低コスト化に重点を置いたFeliCa Liteは、非接触カードの活用事例として挙げられることもある、「街の商店や趣味のグループの会員証」といった用途への応用も意識している。ICチップ自体のコストが非常に安く、紙のカードに貼り付けて配れるので、すでにある紙の会員カードに、後から貼り付けて使うといったことも可能だ。コストも安いので、数十枚単位の少量で導入することもできる。
商品への応用事例としては、雑誌やギフトカード、ダイレクトメールにICチップを貼り付けて、顧客をウェブサイトへ誘導するといった使い方も挙げられている。例えばCDやDVDの購入者限定特典として、FeliCa Liteを使ってスペシャルなサイトに誘導するといったことも可能だろう。
今までも、CDパッケージ内にURLを記述しておくという形で購入者を誘導することはできたが、URL程度では容易にネットに流出してしまうので、購入者に対する特典とはなりにくい。しかしICチップなら不正な複製はまず心配ないので、真の意味での購入者限定のサービスが可能になる。アニメNewtypeチャンネルでの今後の可能性としては、プレミアム会員限定の試写を、ねんどろいどを認証キーとすることで実現するといったアイデアも語られた。
また、ソフトウェア開発環境にAdobe AIRが含まれていることで、ウェブサービス以外にデスクトップアプリケーションへの発展も可能という。ソフトウェアのオンライン販売のキー代わりにする、といったアイデアもあるようだ。可能性はほとんど無限大に広がる。FeliCaリーダー/ライターは、10月初旬の取材時点で累計850万台以上が出荷されているという。すべてが実働状態にあるわけではないが、プラットフォームとして十分な数を見込めるレベルにある。
フィギュアに話を戻してみよう。フィギュアをパソコン用ソフトと結びつける試みとしては、(株)工画堂スタジオが2006年に、ゲームソフトを収録したUSBメモリー内蔵のフィギュア付きゲームを販売したことがある。記者も以前から、「フィギュアにデジタルガジェットの機能を持たせて、なんか面白いことできないかな?」といろいろ考えていたものだが、現実的な実現方法となると、適当なソリューションが思い浮かばなかった。
有線ではなく無線のFeliCa Liteを使い、ウェブサービスとの連携を図るという点で、今回のねんどろいどは新しい。USBのようにケーブルやコネクターでフィギュアのデザインを制約されることはないし、直径3cm程度の小さな円形台座に内蔵できるので、フィギュア本体のサイズも問わない(現状ではサイズはこれが最小とのこと。人型のフィギュア本体に内蔵するのは、デザイン上さすがに難しいと思われる)。さらに、特定サイトへの導線やユーザー個人の認証に使えると考えれば、今後の応用範囲も広い。
「見て、飾って、集めて楽しむ」が主だったフィギュアが、パソコン用のウェブサービスやアプリケーションと結びつくことで、また新しい楽しみも広がりそうだ。今後の応用製品にも期待したい。