IBM Rational Software Conference 2009基調講演レポート
Rationalが考えるスマートなソフトウェア開発とは?
2009年10月09日 06時00分更新
チームによるソフトウェア開発アーキテクチャ「Jazz」をベースに進化してきたソフトウェア開発プラットフォーム「Rational Software」のカンファレンス「IBM Rational Software Conference 2009」が、日本アイ・ビー・エム主催で開催された。
カンファレンスから「Develop」が外れたのは?
Rational SoftwareがIBMに買収されてから7年、このイベントは5回目となる。いままで、アジャイルやJava、SIPという開発技術や手法を推進してきたRational Softwareだが、今年はカンファレンスのタイトルから「Develop」という単語を外した。開発者/プログラマに生産性の高い使いやすいツールを提供するのは当然だが、iTunesを例にするまでもなく、ソフトウェアはさまざまな形でビジネスに直接ヒットするようになった。ソフトウェア開発=ビジネスプロセス開発になった状況を、タイトルにも込めたというわけだ。
カンファレンスは、午前の基調講演と午後のケーススタディ、そして会場展示の3セクションに分かれて展開されたが、ここでは主に、基調講演で語られた内容をレポートする。
「新しい環境を支えるための、日本人のいい部分は緻密な開発ができるところ」と語るのは、挨拶に登壇した日本アイ・ビー・エム理事 ラショナル事業部事業部長である渡辺公成氏。彼は、IT、組み込み、ビジネスがかみ合って、速く大きなビジネスを実現していただきたいと聴衆に語る。実際に引き合いに出したのはiTunesとSuica。Suicaはゲートを通るだけではなく、引き落としをはじめ生活のさまざまな面に使われ始めている。ソフトウェアのパワーが今後はさまざまな形でビジネスに直接「ヒットする」(渡辺氏)というわけだ。
ソフトウェア開発プラットフォームを
クラウドで提供する
渡辺氏の次に登場したのは、IBMのVicePresident スコット・ヘブナー氏。彼は、ラショナルソフトウェア(以下Rational)の方向性を決定し、市場に対して理解を深めていくミッションを持つ。彼は、Rationalのこれまでの展開をかいつまんで説明したあと、“スマートプラネット”という考え方を示した。
Rationalは、2006年にソフト開発のライフサイクル加速に焦点を絞り、2007年には、グローバルに分散するチームの協業に取り組み、2008年には、PRや上司、組織内での協力をはじめ、コンシューマ、利害関係者、クライアントを含めた「チーム間のコミュニケーション」を主題にした。
そしてこれらは、Jazzのアーキテクチャをベースに変革を図ってきたわけだが、今年は今までの能力を結集して、「新たな価値を提供できるイノベーション」を行なうと語った。そのひとつが、Jazzをクラウドで提供するサービスを開始することだろう。「サービスをユーザー間で移動させることが重要だ。従量課金で使った分だけ払ったり、スキルインフラを標準化/統合化すれば生産性も高まる。クラウドでは、Rational Team Concertが5分で稼働する。かなりの成果を上げられるだろう」(ハブナー氏)。
次に、スマートプラネットだが、これは世界の変革を言い表わした言葉だ。世界がフラット(オフショア開発をはじめ、インターネットをはじめとしたインフラの整備で距離という経済的障壁が低くなってきたこと)になり、仕事の仕方も機械化し、相互接続し、インテリジェント化した。デバイスの数は増え、相互接続したデバイスは1兆個を超えた。つまり“世界(地球)の機能”が、従来に比べると10倍になったというわけだ。
スマートプラネットの中身をもう少し細かく見ていけば、たとえばスマートな銀行、スマートな病院など、機能化した存在が多く浮かび上がってくる。これらは、ソフトウェアがなければ機能化も相互接続もできない。米国で進むインテリジェントな電力供給スキーム「スマートグリッド」も、まさにソフトウェアパワーのたまものであるだろう。
すなわち、将来はもっともっとソフトウェアへの依存度が高まってくる。どの分野においても、ソフトウェアは戦略的なビジネスアセットになる。そして、Rational Softwareの製品群は、これらソフトウェアを効率的にデリバリする能力を有しているというわけだ。
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