書店のビジネス棚に足を向けると、「見える化」ということばの入った書籍を多々見受ける。営業の実態や社内の在庫、納期といった箇所を明らかにすることで、経営品質をあげることを指南するための書籍である。
何を「見える化」しなければならないのか。その答えは、それぞれの企業によって、異なる。前回紹介したようにフロントオフィス部分の見える化を進めるケースもあれば、バックオフィスの見える化を進めているケースもある。その際に大きな力を発揮するのがITだ。
ITが社内をどのように見える化していくのか、今回は「ITによる在庫の見える化」をはかる企業の取り組みを紹介する。
外部ではなく、社内での見える化がカギ
ここ数年、様々な企業の情報システムを取材すると、「社内の見える化」「経営の見える化」といったキーワードをよく耳にする。恐らく10年以上前だったら、企業における見える化をしなければならない最右翼は財務会計だったろう。
しかし、前回御紹介したように会計業務はIT化が進んでいる。その結果、売上額、支出額については既に明らかになっているものの、「なぜ、売り上げが伸びないのか?」「この支出が発生した要因はどこにあるのか?」といった売り上げ/支出の背景を探るために、「見える化」が必要になっているのだ。
安心感を得るために、担当者はサバを読む?
バックオフィスの中で、見える化が必要となっている代表的なものが「在庫」「納期」といった部分だ。その要因となっているのは、以下のようなビジネス誌ではおなじみのキーワードだ。
- デフレ傾向の進行
- グローバル化による競争激化
- 商品のコモディティ化
最近、取材の際に興味深い出来事が起こった。今年に入って取材した、企業規模、業種は全く異なる2社が全く同じ悩みを抱えていたのだ。最初に取材した会社を取材した際、キーワードとなったのは以下の内容。
- 異なる部署が独自に抱えていた在庫を明らかにして、在庫を適正化すること
急な注文に応じるため、各部署に「隠し在庫」が存在しており、時にそれが不良在庫化するなどコスト増大の要因となっているのだという。別の会社を取材した際にも、何回か「在庫の適正化」ということばが登場する。
「もしかすると、異なる部署がそれぞれ隠し在庫を持っていたりして……?」と質問すると、取材相手は奇妙な顔をした。図星だったのだ。
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