背景~木漏れ日編
さて、ここからが総仕上げとなる後景。「地中海」で何度か背景を描きなおすことになったため、今回は最終的に採用した「建物があるバージョン」を紹介する。そのため順番はちょっと飛ぶが、まずは画面後方にあらわれる地中海の描き方からだ。
なお、動画には描きなおしの過程もすべて収録しているので、どんな背景パターンがあったのかが気になる方はYouTubeでどうぞ。
まずは先ほどと同様に海にあたるレイヤーを選択したらクリッピングマスクをかけ、青に抜けるグラデーションをかける。流量を2%にした楕円形のブラシでグラデーションをなぞり、波の質感をあらわす。続いて流量を20%に上げ、今度は砂浜を描く。出来たらエアブラシでフチをなぞり、やわらかめに調整すれば完成だ。
それでは続いて街並みに進む。資料を手元にキャラクターと同じく下書きをしたら、トーンカーブを調整して色を薄める。続いてShift+クリックで直線の線画を引いて建物を、また通常のブラシで奥の岩を描く。
それが出来たら、記事の前半で説明したように「多角形ツールで対象を選択→塗りつぶしツールで彩色範囲を削る」でそれぞれのベースカラーを塗る。この時点で、明るい部分に1つのマスク、暗い部分の1つのマスクで分けておくこと。
建物の明暗をざっくり分けたら、75pt程度の大きなエアブラシで影を付ける。余分なところを削り落とし、線画部分を非表示にして完成状態を確認。今度は通常のブラシで細かい明暗を付けていく。それが出来たらもう1つクリッピングマスクを作成し、建物全体にグラデーションをかける。
岩はゴツゴツとした印象のカスタムブラシを使用して影を描くようにして質感を出す。同じブラシで緑色を選択し、苔を生やしたら出来上がり。仕上げに建物を選択したら、選択範囲を20pxほど拡張したクリッピングマスクを作成。ガウス単位のボカシを入れることで、光がまぶしく当たっているような効果が生まれる。同じように髪と瞳のハイライトにもこの効果を施すことで、画面に明るい印象が与えられる。
最後のポイントは木漏れ日だ。はじめに人物と椅子を描いたレイヤーを選択したら、レイヤーモードを乗算にして、影の色で塗りつぶす。塗りつぶしたところを泡のような形のカスタムブラシで左上を中心に削った後(塗りつぶしレイヤーの場合「黒」で塗った部分が削られる)、指先ツールで下方向に溶け出すような効果を付ければ完成だ!
そんなわけで出来上がったイラストがこちらっ!
「シチュエーション的には木漏れ日で!」「籐の椅子で足組み」「10月の地中海」など、さんざんなムチャをすべて完璧に入れ込んでくれたINOさんの仕事にあらためてため息が出る。「籐の椅子なんて描いたことないんですけどね」と苦笑しながらも、ここまでのものを仕上げられるのはやはりプロの技だ。
ちなみにもはや恒例となった編集長の「下絵」と比べてみると――
紀元前の壁画と未来世紀のサイネージくらいの開きがあるように思えるのは私だけだろうか。ともかく素晴らしい仕事をありがとうございました!
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