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ゼロからはじめるストレージ入門 第9回

リカバリポイントやスナップショット機能を理解しよう

バックアップを高速化するレプリケーションの仕組み

2009年10月23日 09時00分更新

文● 竹内博史/EMCジャパン株式会社 グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 マネジャー

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少ない容量で複数のビューを提供するスナップショット

 ストレージのスナップショット機能も、前述したレプリケーション機能と並んで多くの企業向けストレージに実装されている(図4)。スナップショット機能を有効にすると、ソースボリュームに対する更新(書き込み)の際に、元のデータを差分ボリュームにコピー、蓄積する。差分ボリュームは更新のみ保存するため、通常はソースボリュームよりも少ない容量で済む。

図4 スナップショット機能概要

 ストレージは、この差分ボリュームに蓄積されたデータと、ソースボリューム上のデータを組み合わせ、過去の特定の時点の仮想的なボリューム(ビュー)を作成し、サーバにアサインすることが可能だ。スナップショット機能は、おもに以下のような用途で利用されている。

  • バックアップサーバがビューをマウントし、静止点を持ったボリュームをテープなど別のメディアへバックアップする(図4の例)
  • 他のサーバがビューをマウントして、ある時点のソースボリューム上のデータをロードする
  • ファイルサーバやNASに実装し、クライアントから古いファイルへのアクセスを可能とする

 スナップショット機能が提供するビューは、差分ボリューム中の蓄積データとソースボリューム上のデータを組み合わせ構成している。ソースボリュームの物理障害が発生した場合はビューを作成することができないため、ビューおよびスナップショット機能は厳密にはバックアップとはいえない。

アプリケーションを意識したバックアップ

 PCのデータをバックアップする際は、利用していない時間、つまりデータが更新されていない時間帯に実行するのが一般的だろう。一方、業務アプリケーションなど24時間運用が前提の場合は、利用していない時間がない。そのため、どのタイミングでバックアップを行なおうとも、データ更新中のファイルをバックアップする可能性がある。この場合、該当ファイルがリカバリデータとして利用できるか疑問が残る。そのため、企業においてはバックアップの際の「静止点」を意識し、リカバリデータとしての「整合性」を維持する仕組みの検討・導入が重要となる。

 データベースやメールサーバなど、企業で24時間運用を前提としているアプリケーションには、多くの場合「オンラインバックアップ」の仕組みが実装されている。オンラインバックアップを有効にすると、データファイルの更新は中止され、データの更新は更新ログなどに一時的に待避させておく。これによって、静止点を持ったファイルをバックアップすることが可能となる。そして、バックアップ終了後はオンラインバックアップを無効にし、その間の更新データをデータファイルに反映させ通常の運用に戻す。

 オンラインバックアップ状態は、通常の運用状態に比べアプリケーションの負荷が増えるのが一般的である。そのため、データ量が多い場合はテープなどの外部メディアに直接バックアップするよりも、ストレージのレプリケーションやスナップショット機能と組み合わせ、オンラインバックアップを短時間で終了させる運用が効果的だ(図5)。

図5 データベースのオンラインバックアップとストレージレプリケーション機能

 EMCのReplication Managerというソフトウェアは、EMCのさまざまなストレージのレプリケーション、スナップショット機能に対応し、OracleやExchange Serverといった業務アプリケーションのオンラインバックアップ機能との連携およびレプリケーション運用自動化が可能だ。通常であれば、IT管理者自らシェルスクリプトやバッチファイルを作成し、ストレージのレプリケーション操作とアプリケーションの静止点作成を定期的に動作させる。Replication Managerはそれらの作業をGUI画面から簡単に設定することが可能で、複数のアプリケーションやストレージのレプリケーションを一元管理する強力なツールだ(図6)。

図6 Replication Manager構成・動作概要

 サーバ仮想化やストレージの統合などにより、ハードウェア機器や運用コストの削減を図る企業ユーザーは、Replication Managerのようなレプリケーション運用自動化ツールの導入も検討すべきである。

 今回は、「リカバリポイント」、「リカバリ時間」というより具体的なバックアップ要件を例に挙げ、ストレージのレプリケーション機能による高速バックアップ・リカバリの仕組みを紹介した。特に、昨今の企業の情報システムは24時間稼働があたり前となり、バックアップおよびリカバリの運用がより複雑化している。各ストレージベンダーは、こういった厳しい要件に対応するさまざまな機能をリリースしており、企業ユーザーはその機能や実績などを慎重に評価し選択する必要がある。次回は、バックアップ・リカバリのより高度な要件である「災害対策」について解説する。

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