9月25日、EMCジャパンとRSAセキュリティは共同プレスラウンドテーブルを開催した。2006年9月に米EMCが米RSAセキュリティを買収してまる3年経過したことを記念したもので、EMCジャパン代表取締役社長の諸星俊男氏とRSAセキュリティ代表取締役社長の山野修氏がそろって登壇した。
EMCが買収のフィロソフィーを語る
日本ではストレージベンダーとしてのイメージの強いEMCだが、2005年からは情報インフラのトータルベンダーを目指しているという。そのために、売り上げの10%を超える研究開発費を投じ、さらに企業買収によって製品ラインナップや技術を広げている。
買収戦略は現CEOのジョー・トゥッチ(Joseph M. Tucci)氏就任から加速しており、これまでに50社以上を買収。古いところでは、1999年にデータ・ジェネラルを買収し、同社のストレージ製品「CLARiX(クラリックス)」を自社のミッドレンジ向けストレージとしてラインナップしている。 大きなところでは、セキュリティベンダーの老舗のRSAセキュリティや仮想化技術のリーダーであるヴイエムウェア、そして直近ではネットアップとの激しい応酬の末に買い取ったバックアップストレージのデータ・ドメインなどがある。
諸星氏によれば、EMCの買収戦略は日本的なのだという。多くの外資系企業は他社を買収すると、必要な技術や人材を確保したのち、買収企業を解体してしまうことケースが多々見られる。これに対しEMCでは、買収した企業を解体することなく活かしている。このあたりが、日本的ということのようだ。
また諸星氏は、家庭向けリムーバブルメディアベンダーである米アイオメガの買収についても言及した。これまでストレージによる保存の対象となる情報は、企業で作られていた。しかし、写真やメール、音楽データなど、家庭にも重要な情報がどんどん入ってきている。つまり家庭にもストレージが必要となる時代になっており、それに対応すべくアイオメガを買収したというわけだ。コンシューマ市場への参入を示唆した方向性ととることもでき、興味深い買収だ。
EMCのセキュリティをつかさどるRSA
続いて登壇したのが、RSAセキュリティの山野氏だ。RSAは1982年から事業会社としてセキュリティに取り組んでおり、四半世紀の歴史を持つという。
そして現在、EMCのセキュリティ事業の中核となっているのが、「RSA,The Security Division of EMC」とのキャッチフレーズが使われているRSAだ。EMCは認証サービスのバーリッド(Verid)、統合ログ管理アプライアンス「enVision」の開発元であるネットワークインテリジェンス(Network Intelligence)などのセキュリティベンダーを買収しているが、これらはEMC本体ではなくRSAに統合されているという。
一方、RSAといえワンタイム・パスワード製品である「セキュアID」が有名だ。以前より割合は減っているとはいえ、2500社が導入済みで、ユーザー企業数としてはEMCより多いという。もちろん、EMCは大企業を狙っていたのに対し、セキュアIDは幅広い規模の企業が対象となるため、当然といえば当然の状況ではある。EMCが新規企業に営業をかけると、RSAならすでに導入していますという企業がよくあるという。すでにグループ企業の顧客となっていれば営業もしやすいわけで、RSAの知名度はEMCにとっても大きな武器だろう。ここ最近ではenVisionが大きな柱となり、また銀行向けのワンタイムパスワードといったオンラインサービス向けの認証が立ち上がっているという。
お詫びと訂正:掲載当初、セキュアIDをSSLサーバ証明書と誤って説明しておりました。該当部分を訂正するとともにお詫び申し上げます。(2009年9月28日)
EMCのクラウド戦略はあくまで基盤の提供
EMCは、2007年に買収したモジー(Mozy)と2008年に買収したPIを併せて設立したデコ(Decho)において、オンラインバックアップサービスを提供している。今ではクラウドと称されるサービスだ。
クラウドの重要な要素であるストレージを提供するEMCだが、このサービス以外に自前でクラウドサービスを提供する予定はないようだ。その代わりに力を入れているのが、通信事業者やサービスプロバイダ、企業がクラウドを構築するための製品の提供であり、「Atmos」だ。
Atmosは、世界中に分散されたストレージを統合し、管理するクラウド用ストレージ製品だ。Atmosを導入することで、物理的なストレージがニューヨークやロンドン、東京に分かれていても、データがどこにあるかを意識することなくアクセスが可能になるという。現在は実証段階で、日本からは1社が参加しているとのことだ。
