Savageに名前を一新、NVIDIAを追い上げるも……

Savage 3D
1998年には、このViRGE/GXにAGPインターフェースへの対応を追加した「ViRGE/GX2」をリリース。さらに、内部を128bit化した「Savage 3D」を同年リリースする。
このSavage 3D、当初はViRGE/GX3という名称で計画されていたが、「ViRGE」という名前がすでに低価格品として市場に認知されてしまっていたので、新しい名前を付けてブランド刷新を狙った。性能的にはViRGE/GX2で「初代ViRGEの3倍以上の描画性能」とされており、Savage 3Dでは4倍以上と見込まれていた。
Savage 3Dに搭載されたテクスチャ圧縮技法の「S3TC」は、マイクロソフトがDirectXでの標準テクスチャ圧縮技法のひとつとして採用するなど、追い風もあった。目立たないところでは、動画再生支援機能に「MC」(Motion Compensation:動き補正)の機能が追加され、ATI Technologiesの「RAGE」シリーズと並んで、Celeron 400MHzクラスのCPUでもDVDをスムーズに再生できた。
そうした追い風にもかかわらず、売れ行きはいまひとつであったが、後継である「Savage 4」は比較的ヒットする。Savage 4はLT/GT/Pro/Pro+/Xtremeといったラインナップが用意され、メモリーを最大で32MBまで搭載可能になり、さらにAGP2.0にも対応する。最上位のXtremeでは、なんとかNVIDIAの「RIVA TNT」と肩を並べる(でもRIVA TNT2には及ばない)程度まで性能を引き上げており、このまま順調に開発が続けば、遅れを取り戻せそうな勢いであった。
だがその勢いは、次の「Savage 2000」で潰える。メモリーバスも128bit化し、内部構造も大幅に高速化。さらにHardware T&Lである「S3TL」を搭載するなど機能満載だったにもかかわらず、実際の性能はSavage 4にも劣るものだったからだ。理由のひとつは、ドライバーの完成度が非常に低かったことにあるが、それも単にソフトウェアの問題ではなく、「ハードウェアの問題をドライバーで吸収し切れなかったからだ」という見解もある。
いずれにせよ、このSavage 2000が期待外れであったことは事実である。急速に先細る売り上げを補完する目的で、同社はDiamond Multimedia Systemsを買収し、単なるグラフィックチップベンダーではなく、より利幅が取れるカードベンダーに鞍替えするとともに、オーディオ関連製品も展開するが、これも先細りとなる。結局同社はグラフィック部門を、2000年4月にVIA Technologiesに売却する。
この際に、S3とVIAの両社で設立したのが、現在のS3 Graphics社である。S3自体はグラフィック部門から完全撤退すると共に、社名をSONICblueに変更してマルチメディア関連機器の展開に業態を変換するが、最終的には2003年3月に破産して終了する。
ということで、次回はS3 Graphicsにおける製品展開をご紹介したい。
今回のまとめ
・1989年に誕生したS3 Incorporatedは、ポルシェの名車から名を取った「S3 911」で世に出る。
・「86C928」「Vision 964」など、Windows 95以前は高速で名をはせる。しかしDirect3Dの登場以降は性能競争に追いつけず、「ViRGE」シリーズは低価格グラフィックスチップとして扱われる。
・1998年の「Savage 3」で機能を一新。性能差を取り戻し始めるかと思われたが、「Savage 2000」でつまづく。2000年にグラフィックス部門はVIAに売却。S3 Graphics社として再生を図る。

この連載の記事
-
第829回
デジタル
2026年にInstinct MI400シリーズを投入し、サーバー向けGPUのシェア拡大を狙うAMD AMD GPUロードマップ -
第828回
PC
TOP500の4位に躍り出たJUPITER Boosterは効率と性能/消費電力比が驚嘆に値する -
第827回
PC
オーディオとモデムを普及させるのに一役買ったAMRとACR 消え去ったI/F史 -
第826回
PC
PCIeリリース直前に登場しわずか1年の短命に終わったCSA 消え去ったI/F史 -
第825回
PC
バッファがあふれると性能が低下する爆弾を抱えるもライセンスが無料で広く普及したAGP 消え去ったI/F史 -
第824回
PC
AT互換機が普及するきっかけとなったPCIは、MCAの失敗から生まれた 消え去ったI/F史 -
第823回
PC
Intel 18AはIntel 3と比較して性能/消費電力比が15%向上 インテル CPUロードマップ -
第822回
PC
爆発的に普及したことが逆に寿命を縮める結果になったVL-Bus 消え去ったI/F史 -
第821回
PC
IBMのMCAバスに対抗してAT互換機メーカー9社が共同で開発したEISA 消え去ったI/F史 -
第820回
PC
LEDが半導体の救世主に? チップレット同士の接続を電気信号から光信号へ ISSCC 2025詳報 -
第819回
PC
次期Core UltraシリーズのPanther Lakeは今年後半に量産開始 インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ