スマートブックは誰がほしがるのか
しかし、今年のネットブックのトレンドを見ると、昨年と異なる方向に動いている。
最近は、Atomよりもはるかに処理性能の高いCULV(Consumer Ultra Low Voltage:消費者向け超低電圧)プロセッサを採用するケースが増えつつあるのだ。
「Atomではやっぱり性能が足りない」と認知され、価格的には若干上がるが、それでもわずかな差額で現実的な処理性能が得られるのならば、と性能の高いほうを選ぶユーザーが増えている。
このトレンドに対応するには、現在のARMプロセッサのラインナップではやや力不足である。
モバイル環境でのブロード回線という課題
またスマートブックは、CPU性能はそれほど必要ないウェブサービスを使うことを想定しているが、現在の3G~3.5Gの回線では、帯域がやや足りない。
「3.9Gのサービスが始まれば解決する」という声は多いが、それはまだ理論値の話である。実現しても、実際には基地局の設置状況やサービスエリアにかなり左右されるだろう。
おまけに国内だと最近、パケット定額サービスでも帯域制限をかける動きが出てきており、データ量の大きな写真や動画などをウェブサービスで処理したりすると、処理の最中に帯域制限に引っかかって回線切断なんてことになりかねない。だいたい現在のワイヤレス接続サービスは、いずれも帯域あたりのコストが高すぎる。
ランニングコストを考えれば、やや高性能なノートPCにウィンドウズを入れて、全部ノート上で処理したほうがはるかに安いだろう。
周辺機器/アプリケーションにも課題
最後に、対応するアプリケーションや周辺機器がさらに減るという問題がある。前回もプリンタの話をしたが、スマートブックの場合、自宅のプリンタにつないでも印刷できない、なんてこともある。
こうしてみると、スマートブックはできないことずくめなのである。しかし筆者なんかは欲しいと思う。しかしそれは、すでにウィンドウズマシンがたっぷりあって、大半の処理がそちらで済むからだ。
スマートブックは、本当に軽いウェブサービスだけを使うマシンとしては魅力的だが、そうした用途を求める人だけにしか受け入れられない製品だと言えるだろう。
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こちらの記事は、2009年9月24日発売の「月刊ビジネスアスキー 11月号」に掲載された内容をウェブ掲載用に一部改編したものです。ビジネスアスキー本誌の情報は雑誌ウェブサイトでご確認いただけます。
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