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ストレージ管理の切り札 「ARX」を深く濃く解説 第2回

F5のエンジニアによるデモで動きがわかった

マルチベンダーでNASを束ねるってどういうこと?

2009年10月15日 13時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●F5ネットワークス

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さっそくポリシー設定! まずはマイグレーションから

 さて、次は実際のデモとそのためのポリシーを作成してみよう。まず1つめは旧ストレージのZ:\から新ストレージY:\にデータをマイグレーションするというデモだ。しかもユーザーのグローバルネームスペースには文書フォルダーと表計算フォルダーがあるので、新しいY:\には表計算のファイルのみを移行するよう設定する。

古いストレージから新しいストレージへのマイグレーションの例

 マイグレーションのポリシー設定としては、物理ストレージの移行元と移行先のフォルダーと、マイグレーションするファイルの条件を設定すればよい。今回の場合は移行元がZ:\、移行先がY:\の共有フォルダーで、.xlsの拡張子のあるファイルのみをY:\に移行するという条件をウィザードで設定すればよい。また、マイグレーションはユーザーが任意に実行するほか、スケジューリングして土日の深夜に行なうといった処理も可能。設定が完了すると、物理ストレージのスキャンを開始し、マイグレーションを開始する。実際にデモを行なってもらったが、Excelファイルがいち早く新しいY:\に移動された。しかし、物理的な格納位置は異なっても、ユーザーは同じグローバルネームスペースで文書と表計算のファイルを扱える。

ウィザードでマイグレーションするファイルの種別を指定する

 では、ユーザーがファイルを使用中だった場合はどうだろうか? この場合はロックがかけられ、ファイルが閉じられるとロックも解除される。解除されたあとは、もちろん自動的にマイグレーションされるので安心だ。

複数のストレージへのティアリングに挑戦

 さて、次はティアリング(階層化管理)である。ここまで読んでいただければわかるとおり、ティアリングも原理的にはマイグレーションの延長だ。先ほどはファイルの種別を条件にマイグレーションを行なったが、ティアリングの場合はファイルの利用頻度(ファイルの更新日時、もしくはアクセス日時を指定可能)を条件にできる。具体的には、ファイルの更新日時を参照し、古いか、新しいかでファイルを複数のストレージに分配する。

ファイルの更新日時を元にしたファイルの階層化管理

 そのため、ポリシー設定も基本的にはマイグレーションと同じで、移行元と移行先を指定し、ファイルの更新時間で振り分け条件を設定すればよい。たとえば、1年以内に作成されたファイルは高速・高信頼な「Tier1」ストレージ、2年以内に作成されたファイルは通常の「Tier2」ストレージ、3年以内に作成されたファイルは安価なATA「Tier3」ストレージにそれぞれ移動するようにそれぞれポリシーを設定する。あとはマイグレーションと同じく実行すれば、自動的にファイルが振り分けられる。もちろん、ユーザーが利用するグローバルネームスペースは変わらず、利用中の場合はロックがかかるので、意識せずにファイルの作成や編集が行なえる。

 ティアリングはファイルの更新日時だけではなく、マイグレーションと同じくファイルの種別で分類することも可能だ。たとえば、業務にはあまり関係のない音楽や映像のファイルを指定し、これらがファイルサーバやNASを圧迫しないよう、バックアップ等のない安価なストレージに移動してしまうというポリシーも簡単に設定できる。

生成されたポリシーの一覧。必要に応じてオン/オフをチェックする

 そのほか、レプリケーションの場合はボリュームを2つ作成し、非同期でシンクロさせるポリシーを作ればOK。ロードバランシングも書き込み先を指定するだけなので、設定は容易だ。

 今回はARXの導入作業や設定・動作を見ることで、ファイルサーバやNASを束ねるストレージの仮想化を解説してきた。実際のデモを見ると、マイグレーションやティアリングなどのストレージの最適化が実行されていても、エンドユーザーはまったく意識しなくてよいことがわかる。普段使っている共有フォルダでファイルを作成、編集していれば、あとはARXが適宜ファイルを移動したり、複製してくれる。

 たとえば、ファイルサーバを戸棚や名刺入れに見立ててもらいたい。よく読む本やCDが自動的に手に届きやすい位置に分類されていたり、よくコンタクトをとる人の名刺のみが大切に保管されたりしたら便利だろう。ARXはファイルストレージに対して、こういったカリスマ主婦のような整理と最適化を実現してくれるのだ。

 さて、次回はこのARXを導入するにあたって不安となる部分を、エンジニアに応えてもらった。乞うご期待。


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