45nmのままでは儲けが出にくいCore i5
問題は、微妙なCore i7とCore i5の将来製品である。2009年2月時点でのロードマップでは、デスクトップ向けの4コアCPU(=グラフィック非統合型)は2010年に入っても45nmプロセスのまま推移するという話だった。ところがこのままだと、製造原価が高すぎて利幅が十分に取れないという問題が発生する。
特にこれはCore i5で顕著だ。なにしろ、300mm2近いダイを持つCPUを、AMDのPhenom II X4を下回る200ドル未満で販売しているのだ。もちろん、これはPhenom IIに対する猛烈な対抗策であるが、結果として同じLynnfieldでも、より高価格なCore i7系は見向きもされずに、低価格なCore i5に人気が集中することになる。
しかも、Core i5とCore i7の現時点での明確な機能差は、「Hyper Threadingが有効か否か」だけでしかない。ビデオエンコードはともかく、普通の利用ではHyper Threadingを無効にしても、それほど性能が下がらない(Windows 7で多少マシにはなったが、それでもHyper Threadingを無効にすると性能が上がるケースもいまだに少なくない)という現状では、Core i7系の人気がないのも無理ない話である。
だからといって、Core i5の価格を引き上げたらPhenom IIへの対抗という意味合いが薄れる訳で、現実的な対策としては以下のような案になろうか。
- 原価率を下げて利幅を増やすような努力をする
- Core i7系の性能を引き上げることで、明確に差別化する
原価率を下げるにはダイサイズを減らすしかなく、プロセスを変えずにこれを実現するのは難しい。また、Core i7系の性能を上げるには動作周波数を引き上げるしかないが、45nmプロセスのままこれをやるとTDP 95Wの枠をはみ出してしまうため、限界がある。ようするに、Core i7/Core i5共に、32nmプロセスへの移行が必要だろうと筆者は考えるし、実際こうした動きになるだろうと予測する。おそらく時期的には1年後、つまり2010年の後半になるだろうと想像されるが、そこまでは45nmでしのぐという形になるのではないかと想像される。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ