地震や台風、豪雪などの重度な自然災害、交通渋滞やストライキによる交通機関の停止、そしてウイルスの大規模感染(パンデミック)など、企業の事業継続を脅かす要因は多い。こうした中、自宅やモバイル環境での業務遂行を可能にするSSL-VPNに注目が集まっている。
事業継続計画の1つの対策として SSL-VPNに注目集まる
新型インフルエンザのニュースが連日新聞やTVを賑わせている。メキシコで発生した新型インフルエンザはWHOがパンデミック(大規模感染)を宣言し、警戒水準もフェーズ6にまで引き上げられている。強毒性ではないものの、感染スピードが非常に速く、免疫を獲得していないため、大きな社会問題となっている状況だ。いったん従業員がインフルエンザに罹患した場合、同じ社屋で働く社員にも感染する確率が高い。もし、大規模な感染が発見された場合、一時的にでも業務は停止せざるをえないため、大きな金銭的な損失が予想される。
これに対して多くの企業は事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を用意する必要に迫られている。BCPは災害や大規模な感染が起こった場合に、どのように対応するかといった計画を事前に練っておくことで、パンデミック時にも迅速に対応し、事業を継続する体制を整えるための計画。2005年に経済産業省が「事業継続計画策定ガイドライン」を発表して以降、策定する企業も増えている。BCPにはマニュアルや緊急連絡網の整備、非常時の指揮命令系統の策定、災害や感染症などに対する個別の対策などが盛り込まれる。特にインフルエンザ対策としては、海外渡航や出張の自粛や事業の一時的な規模縮小などの手法がとられる。
SSL-VPNによる
パンデミック対策とその課題
こうした事業継続計画を遂行するIT面での方策の1つとして、シンクライアントとともに注目が集まっているのがSSL-VPNである。SSL-VPNは、文字通りWebでのセキュリティを確保するSSLを用いて、企業システムにリモートアクセスする仕組みである。インターネットにつながる場所であれば、どこからでもアクセスできるため、いざパンデミックが発生し、従業員の多くが自宅待機という状態でも業務システムにアクセスできる。
もちろん、SSL-VPNを導入する前提として、紙ベースのシステムではなく、PCとネットワークをベースにしたシステムに移行している必要がある。また、SSLはあくまでトンネルを提供するだけなので、グループウェアやメール、電子会議システムなど、利用するアプリケーションは別途用意する必要がある。しかし、こうした条件が整っていれば、SSL-VPNは会社ときわめて近い仕事環境を自宅においても実現してくれる。
SSL-VPNがBCPの実現手段として好まれるのは、まず導入が容易である点。インターネットとLANの中継ぎになるDMZセグメントにSSL-VPNゲートウェイという製品を設置し、インターネット側からの着信を受け付けるように設定すればよい。多くの製品ではWebブラウザを使って、簡単にリモートアクセスできるので、一番面倒な設定やインストールが必要ない。これであれば、出張先や自宅でも容易に利用できる。また、アクセス制御がしにくいIPsecやレイヤ2のトンネリングプロトコルに対して、上位レイヤのSSL-VPNでは詳細なアクセス制御が行なえる。VPNを利用する前に、セキュリティポリシーをチェックする機能を搭載している製品もあるので、リモートオフィスからウイルスなどが感染する危険性を抑えることも可能だ。
(次ページ、ArraySPXシリーズは なぜパンデミック対策に最適か?)
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