内線電話のIP化で
なぜコストが下がるか?
こうした外線電話のIP化に対して、内線電話のIP化によるコスト削減という手段もある。前述したとおり、VoIPと呼ばれていた頃のIP電話ソリューションは、専用線やWAN回線をデータ通信網に一元化するといった目的を持つモノだった。これに対して2002年以降に起こった企業でのIP電話導入では、おもに構内交換機(PBX)の導入や運用コスト削減が大きな目的になった。
企業のPBXは、数百万円といった初期導入コストのほか、修理用部品の保持や内線番号の変更などに大きなコストがかかっている。こうしたPBXにかかるコストを削減するため、各事務所のPBXを廃し、IP電話での内線を可能にするIP-PBXに集約する「IPセントレックス」という方法が生まれた。2002年に、年間10億かかっていた通信コストを半減するのを目的に、東京ガスが大々的にIPセントレックスの導入を発表したため、当時は「東ガスショック」とまで呼ばれたものだ。
とはいえ、内線のIP電話化は内線番号の管理や転送、保留などのPBX機能を提供するIP-PBX/ソフトスイッチ、IP電話の呼制御を担当するSIPサーバ、そして公衆網との中継を行なうPSTNゲートウェイなどのほか、各ユーザーにはソフトフォンやIP電話機を設置しなければならず、実はかなりのコストがかかる。東京ガスのように複数拠点あるような大企業であればともかく、多くの中小企業にはIP電話の施設自体を入れることが大きなコスト負担だったのだ。また、既存の交換機ベースの電話サービス業者も、IP電話に比べて安価なプランを出してきたため、コスト面でのメリットが出ないといった点も出てきた。むしろ、PBXをIP化したために、ユーザーが新しい操作体系に合わず、かえって生産性が落ちるという可能性もある。
IP-PBXをホスティング
ソフトフォン活用を目指せ
さて、東ガスショックからすでに7年が経ち、IP電話ブームはすっかり遠のいた感すらある。その間、高品質なインターネット電話を実現したSkypeやオープンソースのIP-PBXであるAsteriskなどのソフトウェアが一気に台頭。また、携帯電話でIP電話を実現する「モバイルセントレックス」という形態も登場した。しかし、多くの企業は外線電話のIP化のみでコスト削減を実現し、既存のPBXをそのまま利用するというパターンに安住しているに違いない。
しかし、昨今はIP電話に大きな波が訪れており、改めてコスト削減の手段として、IP電話を再検討すべき時期に来ている。その1つめの理由は、IP-PBXのホスティングを行なうSaaS型IP電話が充実してきた点である。こうしたSaaS型IP電話としては、リンクの「BIZTEL」やアジルネットワークスの「アジルフォン」などが挙げられる。
リンクのBIZTELはAsteriskをカスタマイズしたIP-PBXをデータセンターに設置し、それを共用するという形態でスタートしている。単に外線の発着信ができるだけではなく、内線通話や転送、保留などのPBX機能まで利用でき、しかも月額課金で利用できる。PBXを運営する必要がないので、コスト削減効果も大きい。
コストの面では、拠点間の内線IP化が実現するため、通話料が削減可能。加えて、PBX機材等の導入がないため、その分をサービスの利用料に充てられる。またインターネットがあれば、社内でも、自宅でも、出張先どこからでも利用できるのも大きなメリット。その他、コールセンターやCTIなどを実現するオプションも提供しているので、拡張性も高い。従来、課題となっていたPBX機能や管理などに関しても、十分利用できるものになっている。
昨今は以前IP電話導入に際して高い敷居だったIP電話機に関しても、価格が下落。IP電話機に対してLANケーブル経由で給電を行なうPoEスイッチも安価になったので、従来に比べて、大幅に導入コストが浮くことになったといえる。さらに相手の状態をプレゼンスで調べらたり、アドレス帳が使いやすいソフトフォンも増えており、ビジネスフォン代わりに使える。
IP電話はすでに導入済みという場合でも、外線電話のみというところも多い。特に複数拠点があるユーザーは内線電話のIP化によるコストダウン、モバイル連携やソフトフォン導入による生産性向上まで狙ってはいかがだろうか?
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