ウェブコネクテッドとカスタムUI
「iPhoneでできることのほとんどは、Androidでもできる」と前回書いた。その逆も真か? というと、実は、Andoidでしかできないことがいくつかある。その代表が、「ウィジェット」だろう。これは、Androidの壁紙上に、ニュースのヘッドラインなどを置いておけるものだ。使用中のアプリとは無関係に動作しており、電話をかけたりメールを確認しようとして端末を手にとったときに、最新のニュースが目に飛び込んできたりする。
この種のソフトは、日本の携帯電話にもあるのはご存じのとおり。NTTドコモは、そういったものを利用者のライフスタイルにあわせて提供する「iコンシェル」のようなサービスも開始している。つまり、ウィジェットやプッシュ自体は、まったく新しい概念ではないのだが、これがAndroidという非常にオープンな環境で提供されることの意味は大きい。
iPhone以降、世界のモバイル関係者が注目しているテーマはいくつかある。電子マネー(「Nokia Money」が発表された)やテレビ機能、コンテンツ配信など、日本ではすでにお馴染みのものも少なくない。しかし、その中でも最も大きなテーマは、日本の携帯電話があまり力を入れていない「ウィジェット」と「マルチタスク」ではないかと思う。
ここでキーワードとなるのが、「カスタムUI」(UI=ユーザーインターフェイス)である。
Androidの「カスタムUI」は、スキンだけでなく操作体系までも含めて、文字どおりユーザーインターフェイスを入れ換えることが可能だ。Windows Mobileも、独自のUIをのせることが可能であり、同じような議論が出てきている。たとえば、最近のカスタムUIに関係する話題には次のようなものがある。
- 1.HTCも最新モデルではカスタムUIを採用
- NTTドコモから発売している「HT-03A」(Dream)に続く「Hero」や「Click」などの新端末では、いずれもカスタムUIを搭載。Heroは、国内でもモバイルプラザなどが輸入販売しているが、特徴的なウィジェットのフリックによる切り替えは快適である。
- 2.TwitterやFacebookをプッシュで受信
- モトローラの「Blur」は、TwitterやFacebookのアップデートをプッシュで受信できるカスタムUI。メールではなく、Twitterなどのソーシャル・メディアをプッシュする点が注目される。
- 3.チャイナモバイルが提唱する「OPhone」
- 世界最大の携帯キャリアであるチャイナモバイル(中国移動通信)が、「OMS」(Open Mobile System)というプラットフォームを提唱。Androidをベースにしており、搭載端末を「OPhone」という。レノボやLG、デルが製品を発売することもあり、1勢力になる可能性もある。
- 4.ソニーエリクソンの「Rachael」
- ソニーエリクソンは、「Idou」や「AINO」など、エンターテインメント色の強い端末などを発表して注目されている。同社の取り組みの中では、カスタムUIは大きな意味を持ちそうだ。同社は、Windows Mobileでも「Pannel」と呼ばれる独自UIを提供しているが、Android端末の「Xperia X3 Reichel」でもカスタムUIを採用。
- 5.PNAとスマートフォンの関係も変化
- ASUSTeKは、PNA(ポータブルGPS)大手の「Garmin」と組んでスマートフォンを開発中だが、Windows Mobileを使ったカスタムUIになるものと思われる。一方、PNA最大手のTom Tomは、iPhone用アプリを発表して注目されている。
- 6.韓国勢は独自UIでフルタッチ化
- サムスンは「touchWiz」、LGは「C-CLASS」といった独自UIで、Windows Mobileベースのフルタッチ携帯をいち早く発売。AndroidでもカスタムUIを積極的に採用。
- 7.JIL=大手キャリア連合
- ボーダフォン、チャイナモバイル、ソフトバンク、ベライゾンからなる「JIL」(ジョイント・イノベーション・ラボ)が、クロスプラットフォームのウィジェット環境を開発するという。大手キャリア同士の力関係から、難しさもあると思われるが、影響力を持ってくる可能性もある。
カスタムUIによって、iPhone以降のフルタッチ携帯のユーザーインターフェイスは急速に変化しはじめているのだ。その目的は、次のようなことだろう。
- AndroidやWindows Mobileを、iPhoneなみにシンプルに
- マルチタスクの切り替えをフリック動作でラクチンに
- TwitterやFacebookなど、ソーシャルメディアとの連携
- 携帯電話を「ウィジェット端末」ともいえるものに
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日本ではiPhoneが売れ始めている。海外では、Android端末はiPhoneの数分の1という水準と思われるが、こちらも売れ始めている。Android Marketのソフト登録本数は先頃、1万本を突破したといわれる。それに対して日本では、まだ当分の間は従来型の携帯電話の時代が続くと考えている関係者が少なくないようだ。おサイフケータイやワンセグ、絵文字などがその理由だという。しかし、世界はiPhoneの次をめざして動きだしている。
※次回に続く