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編集者の眼第4回

画面解像度の種類は4252種類! 4年で約43倍に

2009年09月15日 15時15分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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 アクセス解析ツール「シビラ」を開発・販売する環(かん)の江尻俊章社長から、「画面解像度の種類がここ数年で爆発的に増えている」という話を聞いた。Webサイトを運営していれば自社サイトの画面解像度シェアは分かるが、他社サイトまでは分からない。ASP型のアクセス解析ツールを提供している環であれば、より俯瞰した立場で状況の変化が分かるはずだ。「それは面白い!ぜひデータを見せてください」とお願いし、画面解像度のシェアを集計してもらった。

2009年のシェア

 手元のASCII.jpの画面解像度のデータと比べると、シェアの順位が若干異なるが、シェアの高い上位3件が1024×768(XGA)1280×800(WXGA)1280×1024(SXGA)であることは同じ。では、4年前、2005年の解像度シェアはどうだったのかというと、下の表のように、今とはかなり異なる。この4年で、1024×768(XGA)のシェアが半減し、横幅が1280ピクセル以上の解像度が増えた。ワイド画面(アスペクト比が16:9または16:10)の1920×1200(WUXGA)のような解像度も明らかに増えている。

2005年のシェア

画面解像度で機種まで判別、新たな広告手法の予感

 シェアの順位以上に変化が激しいのは、画面解像度の種類だ。2005年には99種類だったが、2006年には331種類2008年には1307種類2009年(暫定値)には4252種類にも増えた。シビラはJavaScriptをWebページに埋め込むビーコン型のアクセス解析ツールであり、JavaScript未対応のクライアント(ケータイなど)からのアクセスは数に入っていない。4年で約43倍増えているのはPCとスマートフォンの世界に限った話であり、ケータイまで含めるとさらに解像度の種類は多くなるだろう。

 解像度が少なくとも4252種類あることは、何に応用できるだろうか。たとえばiPhoneの画面解像度は320×396ピクセルという特徴があるので、アクセス時にHTTPヘッダーに付与されるWebブラウザーの情報や、JavaScriptで取得できるOS種別を見なくても、解像度だけでiPhoneだと分かる。また、1680×945ピクセルという解像度は、東芝のノートPC「dynabook Qosmio(コスミオ)」シリーズと推定できる。「Qosmioユーザー限定のWiMAX割引キャンペーン」やCD/DVD±RWドライブ内蔵のQosmio用に、「DVDオーサリングソフトのバナー広告」を表示するなど、機種を推定することで、利用環境や潜在的需要を想像できる。常に新しい手法を求めるWeb広告業界には、何かのチャンスが広がっているかもしれない。

 一方、解像度が数千種類あると、従来のPCサイト、ケータイサイトという区分は意味をなさなくなる。PCサイトなら、HTML、CSS、JavaScript、Flashを駆使したサイトを作り、ケータイサイトなら、HTMLだけでも表示可能な横幅の狭いサイトを作る、という作り分けでは、横幅は狭くてもHTMLもCSSもJavaScriptも使えるスマートフォンには対応できないからだ。

 画面を3カラムに分け、左側を主カラムとする最近主流のPCサイトは、幅1024ピクセルを前提にしており、小さなスマートフォンの画面では読むに耐えない。幅が240ピクセル、HTMLしか解釈できないケータイブラウザーで見ても主カラムが崩れずに表示され、CSSやJavaScriptにも対応するiモードブラウザ2.0ではメニューのリンクが画像に代わる。1024ピクセル未満でもPC相当のWebブラウザーでは、JavaScriptで2列目を表示し、3列目は主ペインの下に移動する。対象ブラウザーによってサイトを作り分け、HTML、CSS、JavaScript、Flash/Silverlightといった技術を使い分けるのではなく、同じURLでも、ユーザー環境に合わせて適切なWebページが表示することで、ユーザーがPC、スマートフォン、ケータイを使い分ける現状に対応する方向が見えてくる。

 データを提供してくれた江尻社長は、「画面解像度なんて地味なデータですけど、記事になりますか?」といっていたが、個人的には、Webの進むべき方向まで見えるデータだった。データを集計したのはインターンの学生2人。「最初に触ったのは、PCだった?ケータイだった?」と尋ねると、1人はPC、1人はケータイだという。「PCサイト、ケータイサイトという区分は、やはり意味がないよなぁ」と、思いを強くした。

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