40nmプロセスの歩留まりに苦しみ
55nm品を在庫処分?
実を言うとAMDは、このRV740コアをもう少し幅広く使う予定だった。これ以外に、動作周波数をやや低めた「Radeon HD 4750」という製品が予定されており、サンプルが出回ったり、気の早いショップは予約を受け付けたりした。ところが、この製品は流れてしまい、代わりにRV770ベースの「Radeon HD 4730」が登場することになった。
この理由は2つある。まずTSMCの40nmプロセスの歩留まりが低かったこと。NVIDIA編の第4回でも触れたが、TSMCの40nmの立ち上がりが予想外に悪く、サンプルはともかく、量産をするには数量が十分でなかった。そのため、Radeon HD 4770と4750という2種類のラインナップを維持するのは困難だったようだ。
もうひとつの理由は、55nm製品の処分である。Radeon HD 4730は一見Radeon HD 4830とよく似た構成だが、Raster Operationユニット(ROP)の能力を無理やり減らして性能を下げた、というちょっと妙な構成である。にもかかわらずメモリーはGDDR5のままで、動作周波数もそこそこ高い。消費電力もRadeon HD 4850と大きくは変わらない。要するに、これはRV770の在庫処分のための言わば「見切り品」モデルであり、見切り品であるから価格を下げる必要があり、そのため価格に見合うまで性能を下げたというわけだ。
次世代ではラインナップがすべて40nm世代に入れ替わるのだから、55nm世代の製品を残しておいても使い道がない、という事である。この在庫処分の影響は、後述する「RV790」ベースの「Radeon HD 4860」や「Radeon HD 4790」にも及んだ。これらはいずれも投入が噂されていたが、最終的には見送られる模様だ。ようするに、RV790を作る前にRV770の在庫を片付けてしまい、次世代に早く移行しようということだろう。
そのRV790であるが、2009年4月に「Radeon HD 4890」として投入された。基本的な構造はRV770と同じだが、ダイ周辺にノイズ低減の効果がある「Decap Ring」と呼ばれるデカップリングコンデンサーを追加するなどによって、より高速動作を可能にしたマイナーチェンジモデルである。
しかし、このRV790をラインナップ展開する案は結局消えてしまったようで、この技術はそのまま次世代のGPUに引き継がれたと見られる。
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