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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第31回

ThinkPad T400s 薄型と操作感、無線感度両立の秘訣

2009年09月10日 16時00分更新

文● 西田 宗千佳

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厚みは「3つの大物部品」で決まる?!

「本体の厚みは光ディスク、HDD、バッテリーの3点セットをどう配置するかでだいたい決まります」(磯田氏)

 一方で磯田氏は、「本体の厚み」はもっとシンプルに決定される、と説明する。

磯田「本体の厚みを決めているのは、『大物部品』の高さ。すなわち、光ディスク、HDD、バッテリーの3点セットをどう配置するかでだいたい決まります。すでに述べたように、光ディスクは9.5mm。残りはバッテリーとHDDです」

「この製品の場合、バッテリーはシリンドリカル型(円柱型)ではなく、プリズマティック型(角型)です。これも製品開発の際、一般的なシリンドリカルはやめてプリズマティックにしよう、と最初に決めました。シリンドリカルでは高さが厳しいんです」

「X300で使っていたのはリチウムポリマー充電池ですが、こちらはリチウムイオン充電池です。体積エネルギー密度(Wh/l、体積あたりの容量)と重量エネルギー密度(Wh/kg、重量あたりの容量)の点では、プリズマティック型リチウムイオンの方がポリマーよりも優れています。プリズマティックが入る13mm程度の厚みとスペースがあれば、ポリマーよりもプリズマティックの方が、同じ体積・重量で比較すると容量が取れます。ポリマーの優位性が出るのは、より薄いバッテリーが必要となった場合です。厚み制限が厳しいX300の標準バッテリーやウルトラベイ・バッテリーでは、ポリマーを採用しています」

T400sのバッテリーとT400のバッテリー

T400sのバッテリー(写真下側)とT400のバッテリー。電池形状に角型を選び、厚さを減らした

 残るひとつの「大物」、HDDについては、いろいろとトレードオフもあったようだ。

磯田「残りはHDDをどこに置くか。本当は、2.5インチHDDを積みたいところだったのですが、サイズ的に厳しいという結論になり、1.8インチHDDを搭載しています」

 「パフォーマンスを重視する」というTシリーズの中で、1.8インチHDDを採用するということは、ある種矛盾をはらんでいる。ご存じのとおり、2.5インチHDDに比べ、1.8インチHDDはアクセス速度が遅く、パフォーマンス面で大きなマイナスとなりかねないからだ。だがその点については、開発陣にはそれなりの考えがあったようだ。

磯田「実は元々、パフォーマンスを求める方にはSSDを強く推すつもりで開発をしていました。SSDなら1.8インチサイズでも、そこそこの容量が手に入る。1.8インチへ移行することに関しては、デメリットはあまりない、と感じていました」

「ただ問題は、1.8インチHDDを使うことをどう考えるか、なんです。SSDとHDDの価格差はかなりあるので、1.8型のHDDにインテル社の「ターボ・メモリー」技術を組み合わせるのはどうだろう? と考えています」

「ターボ・メモリーは、登場当初は満足な性能が出なかったのですが、今はかなりパフォーマンスに貢献できるようになっています。1.8インチHDDを選ばれた方には、ターボ・メモリーを推薦させていただくことで、SSDまでの投資をしなくてもそこそこのパフォーマンスをえられるのではないか、と考えています」

 ターボ・メモリーというと、Vistaの登場当時は脚光を浴びたものの、パフォーマンスが今ひとつ上がらなかったことに加えて、SSDが低価格化したことなどから、いまや顧みられることの少ない技術となっている。だが、現在はOS側の改善も進み、実効速度が上がってきている、と磯田氏は話す。「安くパフォーマンスを上げる」ならば、CTOでターボ・メモリーを搭載するのがお勧め、ということになりそうだ。

 ちなみに、現時点でレノボのCTOでは、ターボ・メモリーが5460円で搭載可能となっている。120GB HDDを128GB SSDに変えると、8万5050円のコストアップになるが、その15分の1の価格で、そこそこのパフォーマンスアップが見込めることになる。T400sに限らず、ノートパソコンをBTO/CTOで注文する時には、頭に置いておくとお得な知識、といえそうだ。

ThinkPad T400s(2801A7J)の主な仕様
CPU Core 2 Duo SU9400(2.40GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス Intel GS45 Expressチップセット内蔵
ディスプレー 14.1型ワイド 1440×900ドット
HDD 250GB
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 2.1
カードスロット メモリーカードスロット(SD/SDHCメモリーカード、メモリースティック/PROなどに対応)
インターフェース USB 2.0×3、アナログRGB出力(付属アダプター)、10/100BASE-TX LAN(付属アダプター)など
サイズ 幅337×奥行き241×高さ21.1~25.9mm
質量 約1.79g
バッテリー駆動時間 約6.3時間
OS Windows XP Professional SP3(Windows Vista Businessダウングレード)
価格 19万9500円(ダイレクト価格)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」「クラウド・コンピューティング仕事術」(朝日新聞出版)。


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