厚みは「3つの大物部品」で決まる?!
一方で磯田氏は、「本体の厚み」はもっとシンプルに決定される、と説明する。
磯田「本体の厚みを決めているのは、『大物部品』の高さ。すなわち、光ディスク、HDD、バッテリーの3点セットをどう配置するかでだいたい決まります。すでに述べたように、光ディスクは9.5mm。残りはバッテリーとHDDです」
「この製品の場合、バッテリーはシリンドリカル型(円柱型)ではなく、プリズマティック型(角型)です。これも製品開発の際、一般的なシリンドリカルはやめてプリズマティックにしよう、と最初に決めました。シリンドリカルでは高さが厳しいんです」
「X300で使っていたのはリチウムポリマー充電池ですが、こちらはリチウムイオン充電池です。体積エネルギー密度(Wh/l、体積あたりの容量)と重量エネルギー密度(Wh/kg、重量あたりの容量)の点では、プリズマティック型リチウムイオンの方がポリマーよりも優れています。プリズマティックが入る13mm程度の厚みとスペースがあれば、ポリマーよりもプリズマティックの方が、同じ体積・重量で比較すると容量が取れます。ポリマーの優位性が出るのは、より薄いバッテリーが必要となった場合です。厚み制限が厳しいX300の標準バッテリーやウルトラベイ・バッテリーでは、ポリマーを採用しています」
残るひとつの「大物」、HDDについては、いろいろとトレードオフもあったようだ。
磯田「残りはHDDをどこに置くか。本当は、2.5インチHDDを積みたいところだったのですが、サイズ的に厳しいという結論になり、1.8インチHDDを搭載しています」
「パフォーマンスを重視する」というTシリーズの中で、1.8インチHDDを採用するということは、ある種矛盾をはらんでいる。ご存じのとおり、2.5インチHDDに比べ、1.8インチHDDはアクセス速度が遅く、パフォーマンス面で大きなマイナスとなりかねないからだ。だがその点については、開発陣にはそれなりの考えがあったようだ。
磯田「実は元々、パフォーマンスを求める方にはSSDを強く推すつもりで開発をしていました。SSDなら1.8インチサイズでも、そこそこの容量が手に入る。1.8インチへ移行することに関しては、デメリットはあまりない、と感じていました」
「ただ問題は、1.8インチHDDを使うことをどう考えるか、なんです。SSDとHDDの価格差はかなりあるので、1.8型のHDDにインテル社の「ターボ・メモリー」技術を組み合わせるのはどうだろう? と考えています」
「ターボ・メモリーは、登場当初は満足な性能が出なかったのですが、今はかなりパフォーマンスに貢献できるようになっています。1.8インチHDDを選ばれた方には、ターボ・メモリーを推薦させていただくことで、SSDまでの投資をしなくてもそこそこのパフォーマンスをえられるのではないか、と考えています」
ターボ・メモリーというと、Vistaの登場当時は脚光を浴びたものの、パフォーマンスが今ひとつ上がらなかったことに加えて、SSDが低価格化したことなどから、いまや顧みられることの少ない技術となっている。だが、現在はOS側の改善も進み、実効速度が上がってきている、と磯田氏は話す。「安くパフォーマンスを上げる」ならば、CTOでターボ・メモリーを搭載するのがお勧め、ということになりそうだ。
ちなみに、現時点でレノボのCTOでは、ターボ・メモリーが5460円で搭載可能となっている。120GB HDDを128GB SSDに変えると、8万5050円のコストアップになるが、その15分の1の価格で、そこそこのパフォーマンスアップが見込めることになる。T400sに限らず、ノートパソコンをBTO/CTOで注文する時には、頭に置いておくとお得な知識、といえそうだ。
ThinkPad T400s(2801A7J)の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core 2 Duo SU9400(2.40GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | Intel GS45 Expressチップセット内蔵 |
ディスプレー | 14.1型ワイド 1440×900ドット |
HDD | 250GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 2.1 |
カードスロット | メモリーカードスロット(SD/SDHCメモリーカード、メモリースティック/PROなどに対応) |
インターフェース | USB 2.0×3、アナログRGB出力(付属アダプター)、10/100BASE-TX LAN(付属アダプター)など |
サイズ | 幅337×奥行き241×高さ21.1~25.9mm |
質量 | 約1.79g |
バッテリー駆動時間 | 約6.3時間 |
OS | Windows XP Professional SP3(Windows Vista Businessダウングレード) |
価格 | 19万9500円(ダイレクト価格) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」「クラウド・コンピューティング仕事術」(朝日新聞出版)。
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