レベル2〜3のSEは飽和状態、さらなるレベル向上を
さて、ITSSは最初に触れたように人材育成という役割があるが、一方で厳しい経済状況になると、教育コストは圧縮される傾向にある。しかしSEのレベルを引き上げていかなければ、企業の存続が危うくなると島田氏は警鐘を鳴らす。
「日本では、ITSSにおけるレベル2や3というレイヤーのSEが70〜80%に達すると言われています。ただ、下位レベルのSEがこれまで担っていた領域は、中国やインド、あるいはベトナムで開発するというオフショアに移行しつつあります。つまり、レベル2、3のエンジニアは飽和状態になっているため、今後は更に厳しくなっていくということになります」
コストを抑えて開発できるオフショア開発が広まれば、それまで国内で同様の作業を担ってきたSEは厳しい立場に追い込まれる。現状がいくら厳しい情勢であっても、今こそ力を付けるべき時期だと、島田氏は語る。
「特に中堅・中小規模の開発会社は、下請構造から脱却することが必要。それには当然目標値が必要だと思いますし、またオリジナリティのある特化した技術を持っていることが必要になると思います。そういうことを考えつつ、現在の情勢のような時期にうまくSEを育てるなどして、体力を付けておく必要があるのではないでしょうか。不況期から脱出し、景気が立ち上がってきたときに、ビジネスとして乗り遅れないようにするためにも、競争力の高い人材が必要です。したがってこの不況期にどれだけ我慢してSEを育成しておくかどうかで将来は相当変わってくるはずです」
最後に、ITSSの活用方法を島田氏に聞いた。
「人材育成の観点で重要になるのは、自社の優位性や特異性、あるいは差別化をどう打ち出すのかを考えることではないかと考えています。それを実現するにはどういった人材が必要なのか、そして現状の人材はどのレベルに位置しているのかということを考えるときのリファレンスとして使って頂きたいと思います。こうして目標を定め、成果が見えるような人材育成を行うことが重要で、ITSSはその道具として活用して頂けるのではないでしょうか」
「情報サービス産業として、特に中小企業については、今までの延長線上のビジネスではなく、会社の将来を見据えたビジネス戦略をきっちりと持ち、戦略に基づいた必要な人材を育成することで、下請構造から脱却する産業構造の変革を行う必要があるのではないでしょうか」
今回お話を伺っていて強く感じたのは、システムインテグレータをはじめとするソフトウェア開発会社における、企業としてのビジョンの重要性である。SEの育成にITSSは有効なツールとなり得るが、その育成のベースにあるのは企業としての事業戦略や経営戦略であり、それがないままITSSを活用しようとしても行き当たりばったりになりかねないということだ。
経営者であれば自分の会社が将来どういったビジネスを展開しているのか、個々のSEは自分がなりたいと考えているSE像と自社のビジョンは合致しているのか、改めて考えなければならない時期に差し掛かっているのは間違いない。
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