日本で初めての競技は無事に幕を閉じた
この後は、ミュンヘン工科大学による高速化トライアルや、神奈川大学による兄弟クライマー同時上昇トライアルなどの試みが次々と行なわれる。ミュンヘン工科大学がバッテリーを設計本来のものにパワーアップし、秒速4.8mの高速上昇を見せたり、神奈川大チームが見事2台同時上昇を実現したものの、1号機が降りられなくなり、またまたテザー引き下ろしが発生するなど、楽しい(?)挑戦が続いた。名古屋大チームは、最後まで調整を続けたものの、競技に復帰できず棄権となり、心残りだがここで競技会は終了となった。
表彰式では、圧倒的な上昇スピードを見せたミュンヘン工科大学が、52秒/150mの成績で総合優勝。3分3秒/150mの成績を残した日本大学理工学部羽多野研究室チームが総合準優勝し、神奈川大学工学部江上研究室 KSC-1チームが3分16秒/150mで総合第3位として表彰された。
「初めての挑戦であり、なるべくいろいろなチームを表彰したい」と青木教授の意向を反映し、クライマーのさまざな部分を評価する賞も贈られた。「スピードクライマー賞」にはミュンヘン工科大学、クライマーへの各種センサー類搭載や稼働状況を評価する「多機能クライマー賞」にはこれまたミュンヘン工科大学チーム。電子部品配置の工夫やモーター電磁ノイズ対策など、12項目の回路設計を評価する「サーキット賞」には、回路自作にこだわった日本大学理工学部羽多野研究室チーム、クライマーの落下・衝撃対策や安全面を考慮したブレーキなど、SE上での運用を考慮したクライマー設計を評価する「メカニズム賞」には、空中で静止するブレーキを組み込んだ日本大学理工学部青木研究室に贈られた。外観の美しさを評価する「未来デザイン賞」に輝いた神奈川大学工学部江上研究室KSC-2には、「あなたの弁当箱、最高でした」とのコメントが。
夕方から豪雨となったこの日、降りだす前に無事競技会は終わったが、翌年に向けて挑戦は続く。次回はテザーを300mに、その次は600mの高さまで上げていくとのこと。参加チームはより高速・安全、確実に上昇するクライマーが求められることだろう。米国での競技会を主催するスペースワード財団から競技会見学に訪れたレン・J・アノゲル氏は、バルーンでテザーを釣り上げる日本方式を「ナチュラルだ」と評価していた。今年のPowerBeamingコンテストでは、ヘリコプターで1500mのテザーを釣り上げたところ、テザーが切れてしまうアクシデントに見舞われ、競技延期になったそうだ。自然条件を競技に取り入れた日本式が、SE実現に寄与するシーンもきっとありうる、そう思わせた第一回競技会だった。
クライマー上昇
競技二日目、神奈川大学KSC-1の昇降。「3、2、1、スタート」で計測を開始する。競技の緊迫感ただようが、ウグイスが声援を。
ミュンヘン大学の活躍
優勝チーム、ミュンヘン工科大学が優勝した昇降。ドイツ語でのカウントダウンがクライマーに伝わったか。あまりの速さに「はや~っ!」と驚きの声が漏れる。
トラブルに泣かされる
チーム奥澤のクライマー。モーターを取り替えての昇降で、登りきったものの、この後降りられなくなった。