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無線LANのすべて 第2回

記号に隠された意味とは

数ある無線LAN規格を総ざらいしよう

2009年09月10日 06時00分更新

文● 鈴本薫平

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アクセスポイント間で情報交換するF

 アクセスポイント間で特に情報をやり取りしなくても、クライアントが自発的にローミングすることは可能だ。とはいえ、あらかじめアクセスポイント同士で情報を交換しておけば、効率のよいローミングができるのも事実である。当初のIEEE802.11には、このようなアクセスポイント間のやり取りが規定されておらず、メーカーごとに独自のプロトコルを実装していた。そのため、相互接続性が失なわれるという事態に陥ってしまった。そこで設置されたのがTGFで、IEEE802.11Fとして標準的なアクセスポイント間プロトコル(IAPP:Inter-Access Point Protocol)が2003年に策定された。

 ただ、アクセスポイントを複数設置するような規模の大きい環境では、無線LANスイッチで集中管理して、ローミングなどを制御するケースが多い。そのため、それほど目にする機会はなさそうだ。

bにaを足すとg?

 ひと頃は「無線LAN=11b」といえるぐらい普及した11bだが、収容するクライアントの台数が増えてくると、さすがに11Mbpsという規格上の最高速度に不満が出てきた。

 そこで標準化されたのがIEEE802.11g(以下11g)だ。11gは11bと同じ2.4GHz帯を使いながら、11aと同じ伝送方式のOFDMを用いることで、規格上の最高伝送速度を54Mbpsまで引き上げた。すでに普及している11bとの互換性という追い風もあり、2003年の標準化以降、続々と11b/g両対応の製品がリリースされた。

 ただし、11bと11gは互換性があるとはいえ、両者が混在する環境では伝送速度が極端に低下するという仕様上の問題があった。というのも、11gには11bが通信中であることを事前チェックする機能が備わっているが、11bは11gが通信中であることを知るすべがない。その結果、11gは11bが通信中であれば電波の発信(=パケット送信)を待つが、11bは11gが通信中でもおかまいなしに通信を始めてしまう。すると、当然同じ周波数帯の電波を使っているので、両者が衝突して無意味な信号になり、再送信しなければならない状況になるのだ。

 パケットの再送信が起これば起こるほど、伝送効率は低下する。これを避けるため、無線LAN機器メーカーは独自に「プロテクトモード」などと呼ばれる機能を実装した。これは文字通り11bと11gの通信が衝突しないようにする仕組みである。具体的には、11gが通信中であることを、11bにもわかる信号で通知するというもの。これにより、11gが通信中は11bが待機できるので、信号の衝突が回避でき、その結果伝送効率が向上できるというわけだ。ただ、実際のデータ通信には無関係な無線フレームをやり取りすることになるので、11bや11gが混在しない環境よりも伝送速度が低下することは避けられなかった。

セキュリティ強化のi

 無線LANは目に見えない電波を通信媒体に使うので、「どこからどこまでが通信可能なエリアなのか」がわかりにくい。そのため、セキュリティにはいっそう気を遣わなければならない。

 当初の無線LANには、「WEP(Wired Equivalent Privacy)」というパケット暗号化の仕組みが備わっていた。しかし、2000年の時点で数々の問題点が指摘されており、2001年には解読する方法が見つかってしまった。

 そこで、より強固なセキュリティ機能を検討するため、2001年の6月にTGiが発足した。しかし、IEEEで規格を標準化するには時間がかかることがわかっている。とはいえ、破られるとわかっている仕組みを使い続けるわけにもいかない。企業ユースではなおさらだ。そこで、Wi-Fiアライアンスが率先して、「WPA(Wi-Fi Protected Access)」を規定した(異なるメーカーの製品間の相互接続性認証も実施)。

 WPAに盛り込まれたのは、TGiで話し合われている規格の一部である。その時点で入手可能なWEP対応の製品でも、ファームウェアやデバイスドライバなどのソフトウェアレベルの書き換えで済むよう、セキュリティを強化する最低限の機能だけが抽出された。

 その後、2004年7月にIEEE802.11iが標準化され、これを受けたWi-Fiアライアンスは「WPA2」として相互運用性の検証を行なうことになった。

(次ページ、「無線リソースの管理を最適化するk」に続く)


 

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