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もう値下げはしない――年商4割減を選んだ繁盛店 (3/3)

2009年09月03日 13時00分更新

文●三浦たまみ

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――ネットショップのエキスパートが斬る!――

 コンサルタント、セミナー講師、ネットショップ向けソフトウェア開発など幅広く活躍されているグリーゼ代表取締役社長のこみやまさんに、ネットショップが事業拡大していくうえで大切なポイントについて語っていただきました。



利幅は確実に確保しながら、ワークライフバランスを意識して目標を立てよう

 「ビジネスを始める以上、規模を拡大し売上げを伸ばしてなんぼ」という考えが主流かと思いますが、上を目指すあまり、精神的に行き詰まって病気になってしまったり、社員や家族とのコミュニケーションが二の次になってしまい孤立するケースは多く見受けられます。

 確かに、野心に燃え、ひたすら事業拡大に向けて邁進できるタイプの人もいますが、「売上はそこそこでいいから、自分や家族、周囲の人の幸せを最優先したい」と思う人もいます。どちらがいい、悪いではなく、自分の人生観や生き方に照らし合わせ、ワークライフバランスを意識しながら、“ここまでなら頑張れる”というラインを設定しておくとよいと思います。結果、大山さんのように、売上をセーブしてでも良質な顧客対応を目指すという考えにたどりついたなら、当人にとっては最良の選択をしたことになりますし、もっともストレスの少ない状態で仕事ができるでしょう。

 ただし、自分で自分の限界を決めつけ、明らかに低い売上のラインを設定している人がいるのも事実。精神的な強さや、心の底にある意欲などは表面からは分かりにくいものですが、明らかに両方が備わっているのに限界だと思い込む人を見ると“もったいないな”と思います。ほどほどを目指したけど、余力は残っていると感じている人は、もう少し上を目指してもよいかもしれません。


経営者に徹することができるかも考えよう

 大山さんのように、年商1億円などのある程度の規模になった場合は、自分が経営者に徹することができるのか、改めて問い直す必要があります。特に実店舗を営んできた小売業の方は、職人気質ゆえ、何でも自分でやらないと気が済まないタイプの人が多いですよね。しかし真の意味での経営者は、現場は社員に一任し、自らは理念を掲げ、それが遂行できているか客観的にチェックする能力が求められます。職人としても関わっていた状態から経営者への切り替えるには、相当の自己改革が必要になる――。このことは頭の片隅に覚えておいた方がよいでしょう。


最低限、利幅は4~5割は確保しよう

 割引価格での商品提供を見直して価格を改訂した大山さんですが、これは当然やるべきこと。ネットショップは、利幅を2~3割しかとらずにスタートするケースが多いのですが、最低でも4~5割はとる必要があります。最初から利幅が少ないと、売れれば売れるほど、それに見合うシステムや人材に投じるお金がないために窮地に陥ります。私は1日でも早く値上げすることを勧めていますが、このとき「お客さんが離れるんじゃないか」と怖がる人は多いんです。

 でも、よく考えてみてください。利幅を変更するということは、お客さんが減って年商1億円から7000万になっても、利益は変わらない可能性があるということです。良質な商品を販売しているお店なら、他店と価格競争せずともお客さんは必ずついてくるもの。一時的に数は激減するかもしれませんが、ここで離れたお客さんは、より安い店があればそちらに流れてしまうお客さん。価格ではない部分で価値を見出すお客さんに目を向けるべきです。

 “優良顧客”と末長くつきあうためにも、あらかじめ、どんな人に買ってもらいたいのか明確にしておきましょう。その人たちに理解され、支持されるお店作りを目指すことが何より大切だと思います。


こみやまたみこ:株式会社グリーゼ代表取締役。日本オンラインショッピング大賞審査員、全国イーコマース協議会ベストECショップ大賞審査員などを歴任。現在は、主に全国の商工会議所・産業振興公社等で、オンラインビジネスに関するセミナーを多数開催している。著書に「楽天市場ではやく儲かる徹底セミナー」など。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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