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もう値下げはしない――年商4割減を選んだ繁盛店 (2/3)

2009年09月03日 13時00分更新

文●三浦たまみ

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売上よりも顧客対応、ストレスを溜めない運営方法へ

 大山さんが出した結論は、「売上よりも、質の高い顧客対応を優先しよう」ということでした。

1億円の売上を6000万円前後まで下げれば、時間にもゆとりができます。今まで以上に丁寧な顧客へのメール対応もできるし、自転車の組み立て作業に然るべき時間を割くこともできると思いました」

 大山さんは、それまで割引価格で販売していた商品をすべて見直し、価格を改訂しました。割引販売は廃止し、商品ラインアップも大幅に変更。初心者に売りたい7~10万円の商品をより豊富に揃え、さらに上位機種の品揃えにも力を入れました。結果、年商は6000万円程度まで下がりますが利幅は増えたため、1億円の年商時に比べても、利益を大幅に減少させずに済んだのです。

「当然、他店よりも高い商品が並びますから、価格面だけで見れば不利かもしれません。でも、“うちのよさ”を分かってくれて、そこに付加価値を見出してくれるお客様だけが買ってくれればいいと思ったんです。そのためにも、お客様が買ってよかった! と心底思える自転車を提供し続けることが肝心でした」

 もちろん、すべてをシステマチックに対応する体制を整えれば年商1億円のさらに先を見据えることも可能でした。しかし、それは大山さんが目指す、お客さん一人ひとりととことん向き合って商品を販売するスタイルとはかけ離れてしまいます。大山さんは、自分自身がストレスを溜めない運営方法を選択しました。

 現在は、年商7400万円で推移しているという大山さん。2人のスタッフを育てながら、顧客からの質問や問い合わせに徹底して対応しながら運営しています。大山さんは、1人の顧客が自転車を購入するまでに、30~40通もメールのやりとりをすることが頻繁にあるといいます。こうしたきめ細かな顧客対応こそが、同店が12年もの間、愛され続けてきた秘訣のひとつ。次回はこのあたりのポイントに迫ります。

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