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Windows 7はビジネスPCを変えるか? 第3回

富士通に聞く、法人向けWindows 7戦略

2009年09月03日 09時00分更新

文● 遠竹智寿子

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細分化したニーズに応え、きめ細かい対応を

 “3つのOS”を踏まえつつという製品ラインについて、水内氏は以下のように話す。

水内氏は、ユーザーニーズは多岐にわたり、案件ベースの細かな対応が必要と話す

水内 「(新製品については)4月、10月という発表のサイクルは変わりませんが、タイムリーに出していきたいと思います。PC仕様へのニーズは、業種や分野によっても細分化されてきていますので、そこに応えられる製品を提供していきます。PC需要の底上げをしたいという気持ちは強くあります」

 市場はデスクトップからノートへとシフトしている。最も需要が高いA4ノートでは、モバイルセキュリティーという富士通ならではの技術で付加価値を加え、「製品力での勝負」を仕掛けたいという。

 デスクトップは、低コスト&ハイスペックのセパレートタイプを主軸に据える。設置面積の関係から要望の高い液晶一体型や、クラウドサービスの利用などでニーズのあるシンクライアントなど、“企業ニーズの細分化”にも対応。製品ラインを引き続き固めていく構えだ。

 そのほかの差別化要因としては、「国内生産による品質と信頼性」や「日本メーカーならではの充実したサポート力」を挙げている。

 「複合商談というところで、どれだけインナーシェアをかけられるかが課題」と水内氏が語るように、総合ITベンダーという強みを活かしたビジネスをどう仕掛けるかがポイントだ。全国に拠点を持つ同社の販売網に加え、オンライン直販を通じて、SOHOや中小企業なども含む幅広い企業ユーザーにリーチする。そのための土台は固まっている。

富士通WEB MARTの法人窓口経由で、各種カスタマイズやサポートサービスを提供。SOHOやSMB向けの対応も進めている

 また、以下のようなサービスは、派手さはないが、日本メーカーならではのキメ細かな対応と言える。買い替えや新規導入時の手間を極力減らしたい企業ユーザーに対し、特にアピールできるメニューと言えるだろう。

・現地セットアップ:
 パソコン及びPCワークステーションの導入/設置作業を、ユーザーに代わりサービスエンジニアが実施するサービス。ネットワーク接続やメールアカウントの作成、プリンターの登録などもメニューに含まれている。

・リターナブル集合梱包:
 通常では、パソコン1台につき1梱包だが、これを5台1箱の専用箱で納品するサービス。梱包資材を少なくすることで環境へ考慮し、開梱数を減らすことで、導入時の負荷を軽減できる。

水内 「弊社が目指しているのは、一過性のビジネスではありません。より長くお付き合いできるビジネスです。製品だけではなく、充実したサポート環境も合わせてトータル面で、ユーザーの安心できるパートナーでいたいと思っています」



取材者の目に映る富士通

 富士通を取材して感じた印象は「Windows 7の発売がPC導入の追い風になってほしい」と強く感じてはいるものの、「より重視するべきなのはユーザーニーズである」という点だ。Windows 7への移行は情勢を見ながら進めて行くべきであり、ニーズがあるならば自然に進んでいくもの。Windows 7登場への気負いはあまり感じられなかった。

 「仮想化」「セキュリティー」「省電力」といったWindows 7の注目機能も、うまく相乗効果が狙えればいいとは思ってはいるものの、そこだけを尖らせてアピールしたところでユーザーは動かないと考えているように思える。水内氏は「車ではエコカーがあたり前になっているように、こういった機能は“あって当たり前”として見られるようになってくる」と話していた。

 定期的なPCの入れ替えの際に不安感を低減できる「互換性」や「XPモード」が、ユーザーの評価につながるのか。この点は、鶴見氏も「ユーザーに対して販売推進のキーワードにはなるだろう」とコメントしていた。マイクロソフトは「Windows 7のコスト削減効果」について盛んにアピールしているが、数字の伴った導入事例がなければ、IT投資に「守り」の姿勢を見せる企業の手綱を緩めることは難しいのではないかと感じる。

 いずれにしても「Windows 7の登場はPC市場活性化へのきっかけに過ぎない」ということだ。

 ここで、ビジネス分野における「IT化」について疑問が湧き上がった。果たして、新しいOSを導入する事が「IT化」なのだろうか? 業務上での問題点をITで改善して仕事の効率化を図り、より高機能・処理の速い業務プロセスを組んで、コストダウンを計るのが、「IT化」本来の目的だったはずである。この点がはっきりと見えない限りは、パソコンの買い替えやWindows 7導入も進まないだろう。

 つまりその要請に応えるための方法をベンダーとして提供できるかが重要になってくる。富士通が自社の価値としてアピールする「品質への信頼性」「独自技術の実装」、そして「市場ニーズの徹底的な分析」はそのためにも必要だ。

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