可用性から考える企業向けストレージの条件とは
ここで、可用性の数値的指標である「稼働率」について解説しておこう。稼働率は、製品やシステムの品質が、より直感的に理解できるためとても便利な指標である。少し想像してもらいたい。あなたの会社で利用しているシステム(電子メールサーバやファイルサーバなど)の年間稼働率が、99%であれば十分であるといえるだろうか?
実際に計算すると、稼働率が約99%というのは、年間約3日間もシステムが停止する事態に相当するのである。電子メールやファイルサーバが3日間も利用できなくなることは、社員の生産性低下だけでは済まされず、企業活動にも大きな悪影響を与えるだろう。稼働率99%とは、決して高い数値ではないのである。
では、どの程度の稼働率が企業のシステムとして妥当であるのか?たとえば、稼働率99.9%だとすると8時間のシステムダウンが伴う計算となる。この値は、限られた社内向けのシステムであれば許容されるかもしれない。しかし、インターネットを通じてビジネスを展開している企業のシステムなどは、システムダウンが会社の利益損失に直結する事態となる。そのためより高い稼働率が求められるだろう。
さらに、ストレージアレイはサーバよりも高い稼働率が求められている。下図(図3)に示した通り、ストレージアレイ上のボリューム(論理的な記憶領域)とサーバは1対1の関係にあり、1つのボリュームに複数のサーバが同時接続することはできず、データの整合性を維持しながら分散配置することが難しい。また、複数のサーバがそれぞれのボリュームを1台のストレージアレイに配置している環境において、ストレージアレイ自体の稼働が停止すると、接続されているすべてのサーバまで停止してしまう。
これらの理由から、企業向けストレージは稼働率99.999%を維持していることが必要とされている。もちろん、この稼働率はストレージアレイ製品によってカタログ上の値であるケースが多い。したがって、製品選定においては、実際の稼働実績から算出された稼働率で比較検討することが望ましい。
今回は、ストレージアレイに求められる条件について、一般的な指標と対比させながら考えてみた。稼働率など具体的な数値からストレージアレイ製品を評価すると、より定量的に製品の特徴や品質を理解することができるので、ぜひとも活用していただきたい。次回は、企業向けに市販されているストレージアレイにおいて、現在標準となっているアーキテクチャについて解説し、さらにストレージの理解を深めていきたい。
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