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TECH担当者のIT業界物見遊山 第1回

HSPA全盛時代に公衆無線LANを再評価!

2009年09月01日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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TECH.ASCII.jpで本格的に記事掲出し始めて、ほぼ4カ月が経過した。外出先で記事の執筆を行なうことが増えたため、いよいよイー・モバイルのサービスにも加入した。しかし、改めて評価が高まっているのは以前から使っている公衆無線LANだったりする。

担当がモバイルワーカーになった理由

夏の暑い日は涼しいプロントでアイスコーヒーを飲みながら原稿執筆だ

 TECH.ASCII.jp編集部は、ASCII.jp内の「情報システム」カテゴリに記事を掲出するのを生業としている。読んでいただければわかる通り、おもに企業向けの製品やサービス、技術解説をメインにしており、現在はネットワークやセキュリティ系の記事が強い。だが、今後はサーバやストレージ、仮想化、OSなどの記事もどんどん充実させていく予定だ。

 さて、紙媒体であったNETWORK magazine編集部からWeb媒体に移って以来、担当が出席する発表会や取材の数は大幅に増えた。その結果、オフィス内ではなく、外出先で仕事することもきわめて多くなった。しかも午前中オフィスにいないといったレベルではなく、複数の取材や発表会をはしごして、直行・直帰という日も月に3~4日はある。出勤簿の内容を承認する上司は、さぞ不審がっているに違いない

 しかし、この背景にはいくつかの理由がある。まず、現在のアスキー・メディアワークスのオフィスがJR新宿駅から徒歩15分前後という至便とは言い難いロケーションに位置する点だ。そのため、いったん「シャバ」に出たら、なるべく複数の用事をまとめて済ませてしまいたい。そして、もう1つの大きな理由が、外出先でも十分に仕事がこなせてしまうという事情だ。現在のASCII.jpはWebブラウザから記事を登録するオリジナルのCMSを採用しており、VPNを経由すれば、どこからでも記事を投稿できる。また、今使っているノートPC(FMV-T8140)にロングバッテリーを導入したところ、実時間で7時間くらいもつようになってしまった。そのため、よほどなことがない限り、バッテリ切れという事態に陥らなくなったのだ。

 そして、最後が通信環境だ。従来から使っていた公衆無線LANに加え、定額のHSDPA/HSUPAサービスが充実したことで、普段歩き回っている都内のエリアでは、ほぼネットワークにつながってしまうようになった。もちろん、この事情はおそらく他の媒体の記者の方々も変わらないので、記事のチェックや回覧といった事情を考慮しなければ、通信環境を事情とした記事の掲出遅延は許されなくなったわけだ。

セカンドオフィスは「プロント」に決定

 さて、イー・モバイルのサービスは確かに便利だ。気になるときにささっとPCを開いて、メールやスケジュールをチェックできる。しかし、では現在使っている公衆無線LANサービスを解約してもいいかというと、まったくそんなことにはならない。むしろ、公衆無線LANサービスの恩恵をひしひしと感じる今日この頃である

 現在、担当はNTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」と「トリプレットゲート」に加入している。両者で月に2000円くらいは支払っているのだが、この2つのサービスがあれば、地下鉄の駅内とマクドナルドで公衆無線LANが使える。さらにHOTSPOTの場合、羽田空港や東海道新幹線、発表会の多い六本木ミッドタウンやエムプラス(大手町)、さらにプロントやカフェ・ド・クリエなどの喫茶店までカバーしているので、都内であれば、ほぼ困らない。特に利用頻度の高いプロントは大手町、飯田橋、虎ノ門、代々木、茅場町、五反田、田町など、とにかく駅の近くに多いので便利。主要な駅に関しては、ほぼ場所を覚えているくらいで、完全にセカンドオフィスと化している

タイアップでもなんでもないが、NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT」はおすすめ。今年で3年目だが、月に1680円払う価値はあると思う。

 このように個人的には使う場所が決まっているので、公衆無線LANの最大の課題であるエリア問題がかなり解決している。こうなるとやはり伝送速度の高い公衆無線LANのメリットは大きい。

 現在、ワイヤレスモバイルサービスとして多くの加入者を持つHSDPAは下り7.2Mbps、昨今話題の下りWiMAXは40Mbpsという速度を実現する。しかし、ご存じの通り、これらの伝送速度はあくまで理論値であり、過剰な期待はできない。事実上10Mbpsを超えるのは難しいのが現状で、LTEの基地局がきちんと整備されるまではこの状況を打開しにくい。これに対して、公衆無線LANはエリアが限定されるものの、ほぼ確実に10Mbpsを越える速度が実現する。

 テキストならいざ知らず、容量の大きな写真などのデータをCMSに対して送信しなければならない私たちの仕事では、この数Mbpsの伝送能力の違いが大きな生産性の違いを生むわけだ。転送にかかる時間が短ければ、次の予定に早く向かえるし、バッテリも有効活用できる。その点、HSPA系の通信はまだまだ満足できる速度を提供してくれない

 ワイヤレス技術の基本として、高密度に基地局を実装し、通信範囲(セル)を狭めた方が、伝送速度は高まる。その点、ユーザーと基地局までの近距離通信のみワイヤレスを利用し、長距離伝送をFTTHなどの有線インフラに任せる公衆無線LANのサービスは非常に合理的だ。改めて公衆無線LANの存在意義を確認するとともに、高速な11n化に期待する昨今だ。

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