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最新ユーザー事例探求 第3回

シングルチャネルのシンプルさを享受

成城大学のどこでも無線LANを実現したエクストリコム

2009年08月24日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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シングルチャネルしか
考えていませんでした

 エクストリコムはIT立国イスラエルの新興ベンダー。おもに中~大規模環境の無線LAN製品を扱っており、ワールドワイドではすでに多くの導入実績を積んでいる。日本法人は2007年4月に設立され、大学や病院、工場、一般企業での導入事例をすでに持っている。

成城大学が同社の製品を導入した理由は、シンプルなシングルチャネル対応のアーキテクチャと、パフォーマンスを高める「TrueReuse」という2つの先進的な技術だった。

 シングルチャネル対応とは、複数のAPで1つのチャネルを共有する技術。一般的な無線LANでは隣接するAPで同一チャネルを利用するため、信号同士が干渉してしまう。しかし、エクストリコムの無線LANでは、無線LANスイッチ1台がパケット単位で送受信をコントロールしているので、同一チャネルを使っても混信は発生しない。よって、1つのチャネルですべてのエリアをカバーする」というきわめてシンプルな無線LANが実現する。

単一のチャネルで通信範囲を拡大できるシングルチャネルのメリット

 シングルチャネル対応のエクストリコム製品は、他のAPとの干渉を気にせず、好きなところにAPを置いて、通信範囲を拡大できる。また、AP間での移動(ローミング)の際も、再認証やアドレスの再配布が必要なくなり、チャネルの管理もきわめて容易になる。

 シングルチャネルを実現するエクストリコムのAPは、「UltraThin-AP」と呼ばれる名称のとおり、単なるアンテナに過ぎず、通信制御や暗号化などAPの役割は、「スイッチ」と呼ばれる同社のコントローラがすべて担う。つまり、エクストリコムでいうUltraThin-APは実はAPらしい機能は持っておらず、無線LANスイッチが集中処理しているという構造になるわけだ。

アンテナのみの機能に徹したエクストリコムのUltraThin-AP

APを束ね、通信を完全に制御する「スイッチ」と呼ばれる無線LANコントローラ

 スイッチはAPの電波出力を制御することで相互の干渉を抑えつつ、クライアントからは複数のAPを1つの仮想APに見せる。他社では接続時にスイッチからAPに設定を送り込むというタイプもあるが、こちらはAPに設定すら持たない。そのため、端末からは単一のAPと通信しているように見える。

 五十嵐氏は「吹き抜けという新3号館の構造上、上階・下階からの電波は自ずと漏れてきますので、干渉が前提となります。また、図面のみで設計を行なわなければならず、しかも夏休みの終わりまでに構築する必要がありました。こうしたことから、詳細なセル設計や調整はきわめて困難です。そのため、最初からシングルチャネル対応の製品しか考えていませんでした」と語る。

成城大学 メディアネットワークセンター 田村忠才氏

 一方、シングルチャネルの無線LANには、単一のチャネルを複数クライアントで共有するため、パフォーマンスが落ちてしまうという弱点があるが、エクストリコム製品ではTrueReuseという独自技術によってこれを解消している。TrueReuseとは、干渉しない程度の距離を保ったAPでの通信を同時に複数行なう機能。構築作業を行なった田村忠才氏は「対応したファームウェアでパフォーマンスを調べたのですが、実際に3倍に向上して驚きました」と高く評価している。

 その他、接続ライセンスまで含めたトータルコストが安いこと、APが小さく熱を持たないことも重視された。また、IEEE802.11a/b/gなどを同時4本の電波が使えること、標準でPoEに対応し、エクステンダにより最大200mまで接続距離を伸ばせることなども評価された。「実は検証の際に、特定のチップでの11aの通信がよく切れるという問題がありました。しかし、エクストリコムさんには非常にスピーディにファームウェアを改良してもらいました。これで信頼度も上がりましたね」(五十嵐氏)という逸話もあったようだ。

 最終的にエクストリコムの製品を選定し、2007年5月頃から実機を使って検証を開始。最終的に9月には新3号館での構築作業を終え、無事に新学期に間に合ったという。

UltraThin-APの設置はメディアネットワークセンターの担当者が行なった

(次ページ、構築作業は容易 あとからの調整もOK)


 

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