オバマ勝利のカギは「受け皿政策」にあった
―― 国会の本会議や委員会で、政治家にパソコンやケータイの電子機器を審議や情報発信のために積極的に活用してほしいかというアンケートを取りました(ドワンゴによる。ニコニコ動画で行なわれた)。結果は48%が「それより議論に集中してほしい」という、やや意外なものでした。
これはTwitterを使って議員が発言するというケースが多いということから来たアンケートです。Twitterを活用していたオバマ大統領の場合、発言はしていてもその数は少なかったわけですよね。
田中 オバマが勝利し、就任するまでの間に作られた「change.gov」というサイトがありました。これはオバマが大統領になったときにやってほしい政策を書かせるもので、ランキング機能もありました。
そこでテキストを入力して政策を投稿していたのは全体の4%くらいですが、96%はただクリックするだけ。それが、サイレントマジョリティの声を可視化した瞬間なんです。Twitterもある意味で、それをプロモートする仕組みだと思うんです。オープンソース的に政策プロセスに参画出来るようになってきている。
岸 あえて反論すると、あまりネット幻想を持ってはいけないと思います。たとえば2007年2月に始まった「My Barack Obama.com」。このサイトの開設と同時に、全米でローカルグループというオバマ氏を応援する集まりが起こり、当選までの1年半で20万回はオフラインのイベントをやっていました。オバマ氏を応援したい人が情報交換をするためにネットを使ったというのが実態では。
堀江 ネットをうまく活用する、オバマが勝つ、そういったものが日本で起きそうにないのは、人口分布の違いだと思っています。アメリカは40歳未満の人の方が多い。一方の日本は40歳後半(以上が多い)。若い人の方が多いならネットを活用する人の方が多いのも分かる。日本だとそれはまずないだろうと。
田中 それはぼくも思いません。ただ、政策を訴える前に共通認識を作り上げるという、オバマの戦略的な発想は大きいと思っています。多様性の時代、自分たちが発信したメッセージは99%誤解されるという中で生きていますよね。
そのとき、オバマはメッセージを訴える前に「CHANGE」という言葉を発信した。それを共通認識、共通の受け皿にした。「変わらなければいけない」というメッセージのもと、オバマの3つの弱点である「無名・黒人・実績なし」を強みに変えたんですよ。
―― あらかじめ支援者が登録しているメールマガジンに送ったりするんですよね、考えや主張を。
堀江 それが日本だと、支援者のように見えて、記者たちが見たりしているわけです。クローズドの有料トークイベントのためだけに言ったサービス発言を、雑誌とかに書いたりする。日本の場合はそれがあるから難しいですよね。