さらに高速化する無線LAN802.11nはDraftから最終仕様へ
インテルらが中心となってノートPCを主軸にPCへの無線チップの内蔵を続けた結果、現在では多くのユーザーが無線LANを利用することとなった(表2)。IEEE 802.11a/b/gの規格に準拠したものが中心だが、なかにはIEEE802.11nの機能に対応した製品を利用するユーザーもいることだろう。
IEEE802.11nの特徴は、MIMO(Multi Input Multi Output)による2つ以上の対向アンテナによる同時通信の仕組みを採り入れることで通信帯域と安定性の両方を確保し、IEEE802.11g時代の最大理論速度である54Mbpsを大幅に上回る100Mbps超の通信速度を実現した点にある。
市場にはすでにIEEE802.11n準拠の製品が出回っているが、現在市場に出回っている製品は2007年に策定された802.11n Draft 2.0に準拠している。IEEE802.11n本来のパフォーマンスを実現する最終仕様には到達していないわけだ。とはいえ現時点でDraft 2.0には準拠しており、製品同士の互換性は(多少の相性問題を除けば)実現できている。
Draft 2.0の時点で20MHz分の帯域を利用した1チャネルで150Mbps、2チャネルを同時に通信に使うチャネルボンディング(チャネル合成)で300Mbpsの論理最大速度となっているが、最終仕様への到達により、チャネルボンディング時で最大600Mbpsの論理速度が実現可能になるという。
標準化状況だが、802.11nの標準化を行なっているTGnによれば2009年3月の時点でDraft 8.0のスポンサー投票が行なわれ、最終的な仕様は2009年9月に標準化が完了した。この時点で802.11nの最終仕様をサポートした製品が市場に登場することになるが、旧802.11n製品についてもメーカーによってはファームウェアによる最終仕様へのアップグレードを謳っているものがあり、ある程度の互換性は確保されている。
この最終仕様となった802.11nだが、真の力を発揮するには5GHz帯の利用が必要となる。IEEE802.11nではISMバンドと呼ばれる免許不要の2.4GHz帯に加え、5GHz帯の2つの電波帯域をサポートしている。2.4GHz帯はIEEE802.11b/gやBluetoothなどの無線通信技術が利用している帯域であり、もしIEEE802.11nが下位互換性を実現しようと思えばこの帯域を利用する必要がある。一方で5GHz帯は電波干渉の少ない帯域であり、IEEE802.11aがこの帯域を利用している。IEEE802.11n本来のパフォーマンスを実現するにあたっては、干渉の多い帯域を避け、5GHz帯でIEEE802.11n専用のネットワークを組むのが望ましいとされている。これにより、IEEE802.11n通信により帯域を占有されることもなく、IEEE802.11b/gの無線ネットワークでも安定した通信が実現できるようになる。
(次ページ、「商用サービスが開始したWiMAX次の目標は都市圏インフラ」に続く)
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