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こんなにあるの!? ホームシアターの最新サラウンド技術

2009年08月07日 16時00分更新

文● 鳥居一豊

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  ホームシアターで映画館の音をそのまま再生できる
ロスレス圧縮方式が登場

   一般家庭でのホームシアターは、ドルビーサラウンド時代から登場しており、ドルビーサラウンド音声を収録したVHSソフトやLDソフト、対応するAVアンプなども登場していたが、まだまだ一部のAVファンだけのものだった。現在のように普及するきっかけを作ったのは、1996年に登場したDVD以降。DVDソフトでは「ドルビーデジタル」が標準規格として、「dts」がオプション規格として採用され、映画ソフトなどはほとんどが5.1chサラウンド音声を収録するようになった。

   また、DVDプレーヤーのほか、DVDレコーダーや「プレイステーション 2」などのゲーム機でもドルビーデジタルやdtsに対応。AVアンプとサラウンド再生用のスピーカーがあればホームシアターが比較的容易に実現できるようになってきた。

デノン「DHT-S500HD」(実売6万円前後)は、ドルビーTrueHD、dts-HDマスターオーディオ対応のホームシアターシステムだ

デノン「DHT-S500HD」(実売6万円前後)は、2.1ch構成のホームシアターでは珍しいドルビーTrueHD、dts-HDマスターオーディオ対応モデル。サラウンド再生は「ドルビーバーチャル」で実現している。後からセンター、サラウンドスピーカーを追加することで、リアル5.1chシステムへの発展も可能

 ドルビーデジタルやdtsはその後、後方にサラウンドバック(後方スピーカーの間に置く)を加えた6.1chに進化し、それぞれ「ドルビーデジタルサラウンドEX」、「dts-ES」と呼ばれている。これらを初めて採用したのが、1999年の「スター・ウォーズ エピソード1」だ。フィルム上映される映画としては現在もこれらの方式が採用されているが、最新のデジタルシネマ上映を前提として制作される映画には7.1ch音声を採用した作品も増えている。

   そして、現在主流になりつつあるBlu-ray Discソフトでは、(BDソフト登場の)初期には圧縮をせずオリジナル音声をそのまま収録する「リニアPCM5.1ch」音声が多かったが、最近はロスレス圧縮を採用した「ドルビーTrueHD」や「dts-HDマスターオーディオ」などの新しいサラウンド方式が登場している。

   ロスレス圧縮は、従来までの不可逆圧縮のように情報を間引いたり圧縮による音質の劣化がなく、デコード後は完全にオリジナルの音声が復元される方式。BDソフトの映画では、現在発売されるタイトルのほとんどがドルビーTrueHDやdts-HDマスターオーディオで音声を収録している。

   このほか、不可逆圧縮ながらも転送レートを大幅に高めて音質を向上した「ドルビーデジタルプラス」や「dts-HDハイレゾリューションオーディオ」という規格もある。これらを総称して「HDオーディオ」と呼ぶ。以上が映画館および家庭用ホームシアター機器で採用されるサラウンド方式だ。

   ちなみに、HDオーディオ以外の主なサラウンド方式としては、デジタル放送で採用されている「MPEG-2 AAC」がある。これは、クオリティは多少犠牲になるものの、情報量が小さいため地上デジタル放送などでもサラウンド音声が実現できるメリットがある。

実売5万円前後で買える、パイオニア「VSX-819H」。ドルビーTrueHDとdts-HDマスターオーディオのデコーダーを搭載するだ

実売5万円前後で買える、パイオニア「VSX-819H」。ドルビーTrueHDとdts-HDマスターオーディオのデコーダーを搭載する

   HDオーディオを含めた現行のあらゆるサラウンド方式に対応するには、最新のAVアンプが必要だ。現在では、実売価格5万円前後のモデルもHDオーディオ対応となり、比較的低予算でもBDソフトに収録されたサラウンド音声を楽しめる。

   ちなみに、HDオーディオに非対応のAVアンプなどを使う場合でも、BDではドルビーデジタル音声を必ず収録する決まりがあり、dts音声はdts-HDマスターオーディオでも、dtsと同じ情報を持っているので、ドルビーデジタルとdtsのデコーダーを内蔵するオーディオ機器なら、音質的にはHDオーディオではないものの、BDソフトの音声を楽しむことはできる。


主なサラウンド方式の仕様の違い

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