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仕入資金がない――主婦の店を救ったドロップシッピング (3/3)

2009年08月05日 15時43分更新

文●三浦たまみ

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――ネットショップのエキスパートが斬る!――

 (株)チームデルタ代表取締役社長の谷口さんに 『和食器販売~樂raku~』のブログでのサイト構築について語っていただきました。



ネットショップ運営において、「できないこと」は思い切って見切りをつける潔い姿勢が大切

 少ない元手でネットショップを始める場合、「当初は1人で運営すればいい」と考えるオーナーは多いと思いますが、売上げが上がるにつれ、“限界”を感じるケースは少なくありません。一般的に、月商300万円を超える頃から1人での運営が限界に達し、人を雇うことを検討するケースが多くなるようです。

 月商300万円とは、たとえば1個3000円の商品を1カ月1000個販売すれば到達する金額です。1カ月1000個ということは、休みなく毎日30個程度の商品を梱包して発送しなくてはならない計算になります。扱う商材の重さや大きさなどによっても梱包にかかる作業時間が異なりますが、1日30個の商品を1人で発送する作業は、思いのほか重労働。2~3時間程度必要になる場合はザラにありますし、ギフト用のラッピングなどにも対応するネットショップであればさらに時間がかかります。そのうえ、販促企画、顧客対応、受発注管理、サイト更新、メルマガ発行など日々の業務もこなさなければならないわけですから、1人での運営に限界が生じるのは当然のこと。ここにネットショップが陥りやすい、最初の落とし穴が待ち受けています。


ドロップシッピングのマイナス面も心得よう

 実は最初の成功は、ネットショップ運営の危機をまねく可能性があります。人手のなさが原因で、受注確認、発送通知、発送に遅れが生じ始め、せっかく手にした小さな成功が、信頼を失う理由を作り出してしまうのです。

 いざ新たな人材を確保しようと思っても、よい人材がすぐに見つかるとは限りません。このような事態にならないためにも、あらかじめ売上目標を掲げ、そこに到達するために何をすべきか綿密に計画を練り、どのタイミングで人を雇う可能性が生じるのか、ある程度目星をつけておけておくことは重要です。一方で、人材を雇うのではなく、ドロップシッピングという販売スタイルに切り替えるのも方法です。

 ただし、ドロップシッピングを始めるにあたっては、専門のネットサービス業者を介するにせよ、関口さんのように企業と直接契約するにせよ、マイナス面は認識しておくべきです。まず、無在庫、直送販売ということは、メーカーや卸業者に対して、ある種、こちらのわがままを聞いてもらうことになるわけですから、利益が圧縮されることや、商品のラインアップが狭まってしまう可能性が高まることも覚悟しなくてはなりません。これまで信頼関係を培ってきた取引先との関係が切れてしまってもなお、ドロップシッピングに切り替えるべきなのかは、慎重に考えていくべきです。

 また、ファッションや雑貨をはじめ、店主の仕入れセンスに拠るところの大きい商材を扱うお店がドロップシッピングに切り替えるのは、ネットショップの運営そのものを困難にします


「できないこと」をまずは明確にしよう

 関口さんの場合、「増え続ける在庫を抱え、大量の発送を自力でやれなくなった」という明確な理由があってドロッピシッピングに切り替えていますが、私が最も感心したのは関口さんの“見切りのよさ”。利益を追求するがゆえに、何でも1人で抱え込んでしまって、結果、破綻してしまうオーナーも少なくない中、自分でできること、できないことをきちんと見極め、「できないことはやらない」と腹をくくるのは、実は、なかなかできることではありません。

 現在のネットショップ運営において、「できないこと」はどの程度ありますか? たとえば、サイト制作。慣れないサイト制作を自力でやっているため、かなりの時間を割いているネットショップは数多く見受けられます。この部分に“見切り”をつけ、ネットショップ運営ノウハウに長けたホームページ制作会社に外注すれば、当然、かかる労力は激減し、その分を販売企画やプロモーション活動に回すこともできます。

 あるいは、商品写真の撮影に膨大な時間を費やしているのになかなか思うような写真にならないというショップなら、プロのカメラマンに撮影をお願いするのも1つの方法です。当然、これらの費用は別途かかりますから資金力にもよりますが、「できないこと」に見切りをつけ、外注に出すなり、人を雇うなりを検討する方が、はるかに建設的にショップ運営ができるケースは多いのです。いま自分が置かれている立場、やるべきことに優先順位をつけてどこまでならできるのか、できないのかまずは判断してみることをおすすめします。


谷口浩一:(株)チームデルタ代表取締役社長。広島県生まれ。東洋エンジニアリング(株)にて、システム開発、オブジェクト指向言語のローカライズに従事。また、インターネット黎明期における通信手段の研究・開発・評価を行なう。(株)チームデルタ設立後は、「訪問者をその気にさせる」「顧客に選ばれる理由」 Web戦略立案、サイト構築、ITコンサルティングを行なう。また、800社を超える企業・団体に対し講演・セミナーも行なっている。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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