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人物は入れる? 写真のフォーマットは?

「ゆる鉄」中井精也氏に聞く、スローな鉄道写真の秘訣

2009年07月30日 10時30分更新

文● 加藤 修/アスキー第一書籍編集部

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ゆる鉄センサーを駆使して、主題を見つけ出す

 前置きが少々長くなってしまったが、本コーナーでは「ゆる鉄」写真展を大阪で開催中の中井氏を直撃した結果をお届けする。

天王寺駅で電車を待つ中井氏。「阪堺電気軌道を撮り鉄するなら、600円で乗り降りし放題の1日乗車券がオススメ。3回乗車すれば元が取れますよ」

 中井氏に「ゆる鉄」の撮り方の秘訣について尋ねたところ、「明日の朝、阪堺電気軌道を撮影しに行くので、よかったらご一緒しませんか?」との申し出。これは実際に現場で撮影しながら話を聞かせていただける絶好の機会! というわけで急遽、中井氏の撮影に同行する形となった。

 ちなみに阪堺電気軌道は、天王寺から浜寺駅前までを結ぶ路面電車で、沿線の風景には「大阪人の日々の暮らし」がぎっしり詰まっており、なかなか味わい深い路線だ。「ゆる鉄」の被写体としては格好の材料といえるのではないだろうか。

 そして翌朝、阪堺電気軌道の始発駅・天王寺から乗車し、撮影はスタートした。中井氏は車窓から見える景色を見ながら「いやあ、ゆるくていいなあ」と繰り返す。「ちょっとここで降りましょうか」と天王寺から4駅目の北畠駅で下車し、ぶらぶらと町を歩き始めた。

 犬の散歩をしているおじいさん、路面電車と競争している自転車少年、部活動に向かう中学生たち──そんな日常の光景が目に付くばかりで、鉄道写真にふさわしい被写体が見当たらない……。「ゆる鉄の作品を撮るときは、車両はぜんぜん見てないんですよ。ただひたすら、ゆる~い景色を探しています」と中井氏。たしかに北畠駅で下車してからずっと、中井氏は阪堺電気軌道の車両には目もくれず、この町の人々や様子ばかりを注視している。

北畠駅で降りてさっそく撮影開始。と思いきや、車両ではなく犬の散歩をしている老人や、通学中の学生、遊んでいる子どもたちなどを狙う中井氏

「僕の場合、こども、年配の方、犬&猫、それとスーパーカブあたりを見つけると、ゆる鉄センサーが反応しちゃいますね」と主題探しのコツを教えてくれた。そう言われてみれば、撮影中の中井氏の動きを見ていると、これらの被写体を瞬時に見つけ出して主題に据え、車両や駅舎といった鉄道に関する副題を添えることで「ゆる鉄」作品をつくりあげているのがわかる。

近くの公園に移動し、青く茂った木々を前景に入れて阪堺電気軌道を流し撮り。右の写真は、中井氏を真似しながら筆者が撮影したもの

「ゆる鉄センサーは季節を感じさせるものにも反応するんですよ」と中井氏。木に張り付いていたセミの抜け殻を発見し、こちらもパチリ

途中で栄養補給。大の甘党である中井氏は「なっちゃん ぷるるんゼリー」を一気飲み!

渋すぎる待合室が印象的な姫松駅。ここでも、待合室を単体で撮ることはなく、行き交う人々と絡めながらシャッターを切っていた

中井氏の教えどおり、筆者もケータイカメラで姫松駅の待合室を「ゆる鉄」風に撮ってみた。左が待合室単体で、右が老人を絡めてトイカメラ風に撮影したもの。たしかに人物を添えるだけで“ゆるさ”が増した気がする

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