FOXは合格でディズニーとBBCは不合格
最近ある独立系BS(放送衛星)放送の関係者から、「身売りを考えている」という話を聞いた。アナログBS放送の停止にともなって開放されたチャンネルに参入したのはいいが、大幅な赤字が続いているという。地上波局の作ったBSデジタル局は、地上波の番組の使い回しができるようになったが、独立系はそれができないため、放送する中継器のコストも出ない。
それでも新規チャンネル割り当ては続けられ、6月には9事業者に新規の免許が割り当てられることが決まった。しかし、申請していた28事業者の中でもっとも注目されていたディズニーは不合格となり、外資系ではFOXだけに免許がおりた。BBCでさえ不合格になった。なぜFOXはOKで、ディズニーやBBCがだめなのか。
総務省の審査基準には、「事業開始までの資金調達の適正性及び確実性、事業開始後の収入の算出根拠の客観性及び確実性」などと書かれているが、ディズニーやBBCが資金調達できなくなる可能性があるのだろうか。
これを審議した電波監理審議会のメンバーは、濱田純一氏(東大総長)など、大学の教師や弁護士など。実際に免許人を選んだのは総務省の官僚だが、彼らにどの業者のビジネスが黒字になるか予想する能力があるのだろうか。もし赤字になったら、責任をとるのだろうか。
問題は「広告放送に係る放送時間の占める割合が3割を超えないこと」という基準だ。「広告放送は経営が不安定だから」だという。要するに既存のBS局と競合しないように有料放送だけを選んだということだ(ディズニーはCMを収入源とする、無料放送による参入を計画していた)。
かつてCS(通信衛星)放送が発足するときも、有料放送だけに限るという規制を行なって、CS放送の経営難の原因となった。このように既存の地上波テレビ局を守るために新規参入を妨害する規制が日本の放送業界の経営を悪化させ、世界から孤立させてきた。

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