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【ISGR Weekly業界VIEW】自動車メーカーの環境戦略
本格普及の時代に入ったハイブリッド車
同時に自動車用電池も着々と量産体制に向かう

2008年05月26日 18時00分更新

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国際的行政機関や各国行政による環境規制は、順次規制値は更新されていくものと予想され、更なる低公害のための技術革新ならびにそれらを用いた低公害車の開発および量産は、必至の状況である。こういった状況下において自動車の低公害化方法が、種々実用化され、準備されている。これら低公害化方法は、既に量販の段階のもの、まだ実証段階のものなどがある。本命と言われる燃料電池車や電気自動車であるが、さらなる技術革新と改良により次世代の低公害システム車に移行していくことが望まれる。二次電池はこれまでニッケル水素電池が殆どで...

「ISGR業界情報データベース」(http://www.isgr.co.jp)を運営する株式会社DELTA i.D.総合研究所(東京都千代田区、代表取締役社長:中 博)は「ISGR Weekly業界VIEW」において、ハイブリッド車に関するレポートを公開した。

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環境行政と低公害車、環境技術でリードが日本の将来の布石
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日本では環境に優しい車を低公害車と呼ぶが、この低公害車の開発ニーズの背景となる問題は
 (1)地球環境問題(CO2、地球温暖化)
 (2)石油問題(石油枯渇懸念、代替燃料、燃費効率)
の二つである。
これらの問題は昔から指摘され議論もされてきたが、観測データの整備により地球のキャパシティが意識されるようになった事が、京都議定書に見られるような国際的行政機関や各国行政による環境規制に拍車をかけている。
行政機関による環境規制は、現在の厳しいと思われる規制をクリアしたとしても、順次規制値は更新されていくものと予想され、更なる低公害のための技術革新ならびにそれらを用いた低公害車の開発および量産は、必至の状況である。
こういった状況下において自動車の低公害化方法が、種々実用化され、準備されている。これら低公害化方法は、既に量販の段階のもの、まだ実証段階のものなどがある。本命と言われる燃料電池車や電気自動車などと、つなぎと言われるガソリンハイブリッド車、クリーンディーゼル車などの「自動車の進化イメージ」を描いてみたものが下図である。
現在は量販低公害車のハイブリッド、クリーンディーゼルの有力2システムをめぐって、一部に「ガソリンハイブリッド車かクリーンディーゼル車か」といった議論もあるが、どの低公害システムにも一長一短があり、さらなる技術革新と改良により次世代の低公害システム車に移行していくことが望まれる。

(※図表1参照 http://www.news2u.net/incidental_dsp.php?id=0&rid=NRR200831890

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低公害車の種類
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低公害車には、化石燃料を節約するタイプと化石燃料以外の燃料で走るタイプに分れ、現段階で技術的にもビジネス的にも実用段階にあるものは、ハイブリッド車、クリーンディーゼル車、天然ガス車、バイオ燃料車などである。
(※図表2参照 http://www.news2u.net/incidental_dsp.php?id=1&rid=NRR200831890

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ハイブリッド車の特徴
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作動原理の異なる2種類以上の動力源をもつ車のことで、一般的には内燃エンジンと電気モーターを組み合わせた動力を有する車をハイブリッド車と呼ぶ。
半分は電気自動車で、エネルギーを電気に換えて蓄積出来る二次電池を装備しているため、バッファーとして無駄にしていたエネルギーの有効使用を可能とし高効率を実現している。
ハイブリッド車は、従来車をベースとしていくつかの特有装置が加わった構造である。
1.モーター(発電機も含む) 、2.動力合成制御装置、3.ハイブリッド電子制御ECU、4.パワーコントロールユニット PCU、5.DC-DCコンバーター、6.二次電池、といったハイブリッド車特有のデバイスを「ハイブリッドデバイス」と呼ぶ。
二次電池はこれまでニッケル水素電池が殆どであったが、高性能のリチウムイオン電池への置換は必至であり、ハイブリッド車開発は中核技術であるリチウムイオン電池開発競争の局面に入った。

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本格普及に向けて動き出したハイブリッド車
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1) 日本メーカーの動向

・ハイブリッド車のリーダーであるトヨタは、1997年「プリウス」を投入して以来ハイブリッド車の展開を広げ2012年時点で14車種に増やすことを公表しており、「プリウス」は2008年5月に累積100万台の販売を達成した。また、2010年代の出来るだけ早い時期での年間100万台の販売の実現に向けて展開している。
・ホンダは、「本格普及に向けたハイブリッド戦略」が盛り込まれた新たな3ヵ年計画である10次中期計画のスタートを発表した。本格的な普及に向けた新しいステージに移行させていくため「新型ハイブリッド専用車」に総力で傾注。「新型ハイブリッド専用車」は、2009年初めに日本、北米、欧州で発売し、全世界で年間20万台の販売を見込んでいる。その後、4モデルのハイブリッド車の販売を拡大し、年間の販売台数は50万台程度になる見込み。
・日産は、トヨタのHEVシステムを採用して米国でAltimaを展開すると同時に、2010年に独自のハイブリッド車を販売すると発表している。また日産は、HEV用リチウムイオン電池を国内外の自動車メーカーに供給する電池会社をNECと合弁で設立した。
・その他の日本メーカーも、競合力維持のためハイブリッド車展開は必至の状況である。

(※図表3参照 http://www.news2u.net/incidental_dsp.php?id=2&rid=NRR200831890

2) ハイブリッド車(HEV車)の海外動向

 <アメリカ>

・GM はGM Allisonが有していたハイブリッドシステム技術を基にGM、DCX、BMWと共同開発した「2モードハイブリッド」システムでハイブリッド車を投入し始めている。
マイクロハイブリッドのSaturn Vue、2モードハイブリッドのTahoe、GMC Yukonは投入済で、Aura-Green Line、Malibu、Escalade、SilveradoなどのHEV車投入が予想される。
・Fordからは、Fusion、MilanなどのHEV車投入が予想される。
・Chryslerからは、Aspen Hemi、Dodge DurangoなどのHEV車投入が予想される。

 <ヨーロッパ>

・欧州では高効率のディーゼル車が普及しハイブリッド車開発に積極的でなかったが、北米市場でのトヨタ「プリウス」の成功に刺激されて、ハイブリッド車の開発を急いでいる。
・VW グループとしてはVW/Audi/Porsche3社の共同開発体勢を敷いている。VWからはJetta とToureg、AudiからはQ7、Porscheから CayenneなどのHEV車投入が予想される。
・MercedesからはS400、ML450などのHEV車投入が予想される。
BMWからはX6などのHEV車投入が予想される。
・プジョー・シトロエン(PSA)は、2010年に低コストのディーゼル・ハイブリッドを量産すると発表しており、シトロエンC4 (プジョー307i) HEVサンプル車をショーに出展している。

 <アジア>

・中国の自動車市場は日本市場に匹敵する位に急拡大し、今後モーターリゼーションが本格化する見込みである。高度経済成長でエネルギーと環境問題をかかえており、自動車分野の対策としてハイブリッド車のニーズが非常に高い。国家を挙げてハイブリッド車開発を奨励している。
奇瑞汽車は「A51SG」、「A5」、長安汽車は「傑勲」、上海通用(GM)は「ビュイック・ラクロス」などのHEV車をモーターショーに出展している。
・韓国のHyundaiとKiaからは、それぞれAccent、RioのHEV車投入が予想される。

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ハイブリッド車の需要予測
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プリウスを中心とした日本製ハイブリッド車が04年にアメリカでブレークし、米メーカー製ハイブリッド車も出始めた。今後更に欧米メーカーのハイブリッド車の展開が進み、市場は急拡大していくと予想される。
また中国については、エネルギー問題と環境問題からエコカー(ハイブリッド車)を普及させたい中国政府ニーズと、消費者が高価格のハイブリッド車コストを負担できるかという懸念が交差している。中国におけるハイブリッド車は、たとえフルハイブリッド車としてでなくともマイクロハイブリッド車として普及する可能性もある。
(※図表4参照 http://www.news2u.net/incidental_dsp.php?id=3&rid=NRR200831890
(※図表5参照 http://www.news2u.net/incidental_dsp.php?id=4&rid=NRR200831890

※図表1〜5は、「2006年 低公害自動車の開発と市場構造研究(上巻・下巻)」から一部加筆し掲載している。

≪株式会社DELTA i.D.総合研究所について≫
代表取締役社長:中 博
設立:2007年7月
資本金:1億3,030万円
所在地:東京都千代田区永田町2−4−11 フレンドビル7F
株主:ITXグループ、東京中小企業投資育成株式会社 ほか
URL:http://www.delta-id.com
事業内容
・データベース事業(http://www.isgr.co.jp
・産業全般の総合的調査(日本および、中国を主とするアジア市場)
・分野別受託調査
・コンサルティング
・セミナー、各種研修、書籍発刊等
・「リチウムイオン電池の最新技術動向(http://delta-id.weblogs.jp/lithium_ion_battery)」も更新中

<本リリースに対するお問い合わせ先>
株式会社DELTA i.D.総合研究所 担当:ビジネスコンテンツ事業部
TEL:03-3580-3971(代)/FAX:03-3580-3977
E-mail:info@isgr.co.jp

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